第106回 平成17年6月19日
★よつぴいて食みし蚕の深眠り
★振り干せる野良着の裾の青田風
蓮池や風の裏葉の暮れ残る
比呂
★走り梅雨風の逃げ込むチマチョゴリ
掌の知命運命めうが汁
水玉を揺らす蓮の息遣ひ
昭雄
★蓮開く音訪ふ舟の傾ぎかな
小燕のはや青空を滅多切り
萬緑や風の中なる眠り猫
植竹
★アカシアの蜂を集めて香を放つ
日に靡き風になびきし青田かな
ともこ
★昼顔の空を斜めに登りつむ
天瓜粉打たれて青む蒙古斑
香り立つ蕗の煮えごろ昼の雨
踊り子の揺るる簪額の花
一番列車過ぎししじまや蓮の花
分譲の家立ち並ぶ青田べり
一構
薔薇咲くや風天敵の撮影会
母の忌の母の植えたる薔薇の花
参詣の古道卯の花腐しかな
伊藤
青田波寄せて厨に届く風
茄子の花嘘もお世辞も言へぬ夫
持て余すおまけの鈴に梅雨の音
岩崎
片端に浮きて香りの菖蒲の湯
畦崩れるほどの高鳴き夜の蛙
登美子
水鏡蓮の葉裏の蕾かな
踏み込みし足型残る青田かな
蓮の葉の裏舐め鯉の育ちけれ
青田風ゆがませよろけ青の線
蚕豆や塩の加減の皺加減
青といふ色を尽くして青田かな
敬子
母残す木椅子を庭に白牡丹
夏木立杜氏の秘蔵の樽の酒
北上の大河越え来る青田風
蓮の葉のもんどり打てる強雨かな
清子
薄衣波打つ襞の韓の舞
開かんと首高く張る蓮かな
耕
石の上に散りたるえごの花盛り
一輌のゆるりと停まる青田中
見晴るかす青田すなはち米どころ
良人
駐在の鉢に蕾の大賀蓮
棚田より里山に降り青田風
渡辺
蓮池の褥となりし浮葉かな
風のまま靡く青田の光かな
水玉を零さず抱ける蓮の花
濁り無き水の光の青田かな
利孟
薄暑かな如来の首に金の皺
咲く音を待ち棹納め蓮見舟
夏至の夜のコルク軋ませ抜くワイン