第107回の2 平成17年9月18日

   清子
 人気なき昼の公園とんぼ湧く
 一つ家に玄関二つ良夜かな
★徐州路の一望百里綿摘女

   敬子
 ななかまど笠をあみだに六地蔵
★綿繰りの縁に里山影きざす
 初秋の翠微はるかや八ヶ岳

   紀子
 綿摘むや一日晴れと告ぐお山
★穂芒に触れば風となりにけり

   耕
 胸中に生るる水音天の川
 山合ひの綿摘みに良き日和かな
 牛の目のかすかにうるむ良夜かな
 コスモスの花揺れてより風起こる
 消しゴムの角丸くなる良夜かな

   ともこ
 長き夜のぼんぼん時計の間延びして
 舞ひおりし雲のかけらの綿を摘む
 銀漢や病廊滑るストレッチャー
 折り返す列車三両稲の秋
 行合の空に尾を立て秋茜

   良人
 銀漢に南十字の光濃し
 川風に干割れし白き棉を摘む
 風起こす無人の駅の萩の波
 ビル影の中にバス待つ残暑かな

   比呂
 漁火の更けて銀河の端につく
 朝涼や雲を均して八ヶ岳
 身の丈の花の様々秋野かな
 綿摘むや母の鼻歌子守唄

   信子
 鬼やんま尾つぽ垂れおく疲れやう
 一面の日差しごと綿摘まれけり
 紅芙蓉京の町屋に蔵造り
 年月を重ねて今日の天の川

   ミヨ
 山小屋の裸電球銀河濃し
 摘む綿のふくるる日和遠筑波
 見世倉の軒の暗がり燕立つ
 折り返す蔓の気ままよ烏瓜

   幸子
 綿摘むや母に倣ひてたたく腰
 天の川逢瀬の橋の輝きて
 赤とんぼ水面に描く影丸し
 大玉に子の背隠るる運動会

   永子
 老いてなほ櫓さばき確か鰯雲
 弾けたる綿の白さを摘みにけり
 病癒え灯ともす窓に降る銀河
 野仏や風の渦巻く芒原

   聖子
 修験者のごと身を折りて綿を摘む
 綿摘みの白に似合はぬ芯の種
 土手に寝て星の降り来る天の川

   昭雄
 綿摘みの手甲の母の固き爪
 かなかなや躊躇ひて打つ棺の釘
 天の川津軽じよつぱり三味猛る

   芳子
 まばらなる灯点る峡や天の川
 菊の香を分かちて交す婚指輪

   登美子
 天の川籠につめたきワインかな
 落ち蝉の鳴くかのごとく震へけり

   鴻
 金色の稲を吸ひ込む稲刈機
 書に倦むや窓いつぱいに天の川

   蒔子
 山並の近く見ゆる日綿を摘む
 大虚空背負ひ星河の瞬けり
 とこゐ
 油照り玄関に下駄脱ぎ放し

   利孟
 お大師の宿りし土橋天の川
 大西日名物弁当売り切れで
 指先の分けて闇濃き風の盆