第124回 平成19年月02月12日
△ 春浅し熱きミルクと電子辞書
・ 蝋梅の日ざしに香る芭蕉句碑
・ 室の闇満たして独活の香かな
☆ 湯畑の逆巻く湯花春一番
☆ 指貫を外せし一日針供養
比呂
☆ 皮で研ぐ床屋の刃物春一番
・ 日脚伸ぶ用の無き手を腰に当て
・ 鳥帰るどれも祖国を持たぬ鳥
△ 春の湖魁夷の馬が水呑みに
△ 針祭り一寸法師は鬼を突く
ともこ
幼子の自我の芽生えや春一番
☆ 有る無しの風を乗り継ぎ野火の灰
暖かし指掛け開けるクッキー缶
・ 変換の一語や一期冬苺
・ 師に倣ひ袂を押さへ針納め
・ きりりと弓引く左手春の日矢
・ 春一番干し網膨る浜通り
鉢に香をためて拡がる木の芽和
・ 強東風や網を繕ふ背縮む
針供養意味など知らぬ娘も混ぢり
幸子
元針子往時忍びし針供養
学童のペダル後先春一番
夕東風や媼手早く摘む青菜
百千の女雛に勝る稚児の笑み
△ 重ね着を脱げばなで肩野良の風
登美子
・ 卓袱台に色を散らして針供養
△ 髪で針研ぐ指先や春灯
自転車の三段変速春一番
カンボジアにて
・ 石仏の欠けたる鼻や一月尽
・ 冬夕日落ちる乾期の遺跡群
・ 蟠り消えてどんどの火掻棒
鯨尺在ふくらし針供養
古帽子思ひさらはる春一番
・ 縮みたるままに土割り節分草
渡し舟この面かの面の葱畑
芳子
・ 連れ添うて晴れ着姿の針供養
・ 砂塵巻きて上げ里打つ春一番
兄真似て手にいつぱいの追難豆
・ 水仙や肩書きの無き師の訃報
菜の花の迷路横切るおさげ髪
清子
アンコールワットにて
春の闇方位に迷ふ五大門
春帽子軽く手をあげ振り向かず
△ 神苑の深き昏さにある余寒
・ 洗車する髪を乱して春一番
運針の母の手忍び針供養
冬眠を忘れ野に出る小熊かな
温暖や春一番も出番なし
渡良瀬のよしを焼きつつ春を告げ
供養にも針供養あり娘に伝え
感動を撮りて伝へし初景色
鴻
細やかに母子の飾る針供養
・ 野や山に春一番の土埃
△ ミシン針ばかりの刺され針供養
・ 擡げげたり土に芽を出し蕗の薹
老夫婦終日睦み芹を摘む
昭雄
・ 針供養宮司の祓ふ巫女の針
・ 胸反らす軍鶏の歩みや春一番
・ 野仏や瀬音に育つ蕗のたう
△ 春一番素焼きの壷の口鳴らす
・ 待ち針を盛りて咲かせる針供養
△ 針供養かつて針子の金指環
・ 予報士が記録づくめと梅咲けり
・ 春一番農夫を攻める土埃
・ 余命告ぐ医師の眼差し春疾風
△ 犬を呼ぶ声のちぎれて春一番
信子
気まぐれに途中下車する小春かな
・ 亀が亀背負ひ動かず寒昴
結ひあげし髪の後れ毛針供養
・ 凍雲のゆるぶ気配や朝の水
・ もう誰も居ない校庭春一番
良人
・ 春一番上越境の雲払ふ
△ 春一番杉の秀先に風巻く音
春一番蒔き豆転ぶ寺の階
遊水地春一番の波しぶき
とりどりの和服が埋めて針供養
△ 移転先不明の朱文字春一番
△ 寒桜碑は万葉の恋のうた
△ 春日さす浄財箱へ散る小銭
・ 黒髪をきりりと結ひて針供養
・ 堂飾る彫刻数多春陽射
利孟
ほうほうと雲水のゆく春の雪
薬瓶のならぶ絵具屋春一番
封切りの針を配りて針供養
いづくより波寄す運河冬鴎
出がらしのさめし番茶や春二番