第139回 平成20年05月25日
   永子
★ 番傘に宿の一と文字走り梅雨
△ 宵宮の林切れ切れ届きけり
・ 子を加へ音色若やぐ祭笛
・ 手植して終はる棚田の五月かな
・ 花うつぎ散りゆく杣の切通し

   美代子
★ パレットにみどりいろいろ五月風
△ 窯焼きのパンのパリパリ夏兆す
  吹き曲がる牧柵谷へ花うつぎ
  畑ベリの菜種からぶや空はねて
  預けられ夕焼けに零す黙の牛

   比呂
△ セールボード反り身に五月の風に入る
△ 鈍色の風立ち騒ぐはしり梅雨
・ 反抗期切れても動く蜥蜴の尾
・ 卯の花や茶飲み仲間は結ひ仲間
・ 一遍の小黒き御像ふじの花
   信子
△ 卯の花や厨子の開かる阿弥陀堂
△ 神領の風や五月の眠り猫
・ 卯の花や大学隅の開拓碑
  風五月イーゼル立たす草の上
  跳箱を飛ぶ子飛べぬ子五月晴

   ともこ
△ 母の日や針山にある糸ぼこり
△ 田と畑を隔てし水路花うつぎ
・ 更衣上着ふはりと裏返し
  桐の花背高のつぽの電話塔
  牧草ロール転がる那須野五月かな

   敬子
△ 郭公の声の割り込む朝稽古
・ 花空木井戸のポンプは昭和製
・ 母の日の古希てふ人の弾くソナタ
・ 柿若葉祖父の遺愛の青磁壺
  鳩笛の時報の音色五月晴
   昭雄
・ 花うつぎ足湯の膝の眩しくて
・ 菖蒲湯や抱きし赤子の大あくび
・ この里を青山として種下ろす
・ 花うつぎ咲いて小さな芭蕉句碑
  干し物も雲も真つ白聖五月

   良人
・ 小雨降る畷の辻に咲く空木
・ 谷間の秘湯をかくし花うつ木
・ 瀬音閉じこめて空木の谷覆ふ
  風渡る他の面に映る花うつぎ
  卯の花や煙ほのかな茶臼岳

   登美子
・ たよりなき裏口の鍵柿若葉
・ 母の日や母の残せし下駄の土
  振り返るお濠の土手の若葉かな
  花空木傘忘れしを今気づく
  植田腹蛇行の川に区切られて
   小川
・ 食細る妻にと求め初鰹
・ 朝靄の川面に鮎の群踊る
  うたたねや眠気を誘ふ花うつぎ
  爺々見て指さす空に鯉泳ぐ
  孫掘った初筍を我食す

  
・ 麦秋の畑を進むコンバイン
・ 百年の藁屋の庭に鯉幟
  山肌を新芽が包む五月かな
  卯の花の香り漂ふ田舎道
  連休や園児燥いで苺狩り

   一構
・ 退院の静かな朝夏めけり
・ 夕飯に妻の届けし豆の飯
  看護師の談笑の刻新茶の香
  校庭の声ふつと消え桜かな
  やはらかに腹裂くメスや春の暮
   塩田
・ 釜川や鯉が恋する水しぶき
  卯の花や家族団欒箸すすむ
  時鳥山躑躅見を出迎へる
  五月雨や葉のみずみずしく滴りぬ
  車窓には麦の黄金と田の緑

   利孟
  てんと虫薄羽仕舞はぬまま歩む
  花空木角つけて熨す手打ち蕎麦
  的中の矢の震へ立つ五月かな
  白玉や水槽に引く山の水
  あれやこれ迷ふ注文鳥交る