第138回 平成20年04月27日
湯西川吟行
   良人
△ 山深き里に陽の満つ遅き春
△ 湯の里の老舗蕎麦屋の紺暖簾
・ 茅葺きの屋根に色増す山桜
・ 湯の宿へ影を渡して蔓橋
・ 山笑ふ瀬音鳥語の行き交いて

   ともこ
△ 藁屋根の電話ボックス風薫る
△ みやげ屋の店先で売る種袋
・ 風光る巌をなめる湯西川
・ かたかごや下駄を鳴らして湯治客
  山笑ふ湯舟並べて露天風呂
  春の水平家の里を巡りけり

   信子
△ 草萌ゆる日射しの中の夫婦岩
・ 落人の里や春尽川の音
・ ひとところ白浪猛る春の川
・ 桜背に兵士の野墓鎮もれり
・ 春灯を灯して平家村の宿
・ 枯れ山に花の紅色平家村
・ 春風の朱塗りの橋をくぐり来る
  波が押す波の白浪春の川
  吟行の歩幅の先の花こぶし
  橋過ぎて流れの淀む春の川
   登美子
・ 露天湯の男の肩や山笑ふ
・ 萌え初むる駅足湯に揃ふ膝
・ 湯の里の芽吹き紅色にかな
  芽吹き季水の豊かに昼の宿
  川近き食堂にある春炬燵

   塩田
  願ひつつまだ先かなと山眠る
  山あひの静かさ破る湯西川
  せせらぎの高まり村の目覚む春
  山里や人影まばら暖簾無く
  山桜藁葺き屋根を包み込む

   憲巳
△ 露天湯の谷の深々山笑ふ
・ 川魚の焼ける臭ひや山笑ふ
・ 熊の肉有りと貼り札里の春
・ 門前の桜色濃き山の宿
  花菜風川に瀬打ちの魚かな
  湯の里や若芽で客を導きぬ
   昭雄
△ さえずりの平家の村の一樹より
・ 平家村芽吹く楢の木小楢の木
  せせらぎのほとり春陰深きかな
  走り根に桜咲きをり平家村
  隠れ里ゆえや色濃き山桜
  落人の墓のもつとも芽吹きけり

   美代子
・ 千年の平家の里の遅桜
・ 竹林の奥の暗がり花の宿
・ 藁屋根の切妻かげりけまん草
  千本格子キザミ春日の移ろへり
  古民家や瀬音間近に九輪草

  
・ 灰色の山肌飾る山桜
・ 湯の宿の川瀬の音に辛夷咲く
  清流に岩魚群とぶ湯西川
  藁葺きの旅籠を飾る老桜
  切岸に残る捨て雪湯西川
   利孟
  春まだき落人村の宿旅籠
  落人の里に豆腐屋春炬燵
  燕来る川の瀬音の高まれば
  これよりは會津街道桜蘂
  初燕平家の末裔を名乗る宿
  目覚めたる山へと辛夷明かりかな
  かたかごや陰陽石の反り身にて