第147回 平成21年01月18日
寒の入り束子でこする石の垢
蝋梅の光そこより生まるかに
満腹といひてお替りふく雑炊
初鴉乾くを知らず釣瓶縄
牡蛎小屋に軍手火鋏もて食らふ
ミヨ
△粥仕込む庫裏の暗闇初鴉
★福だるま片目に願の重ね塗り
大茶筒合口ひたと寒の入
△座禅堂阿弥陀の思惟の淑気かな
剃り残す唐子の頭初あかり
登美子
福寿草陽の射すところ相寄れり
メガネ低音顔寄せて見る寒牡丹
△初芝居人形焼の笑ひ頗
初烏犬を遠くに見てゐたり
★冬茜重たき雲の縁染めて
屠蘇に酔ひ顔の火照りをもて余す
○水流る床の底冷え魚市湯
○神楽笛鎮守の闇を震はせて
△風無くて揺るる高枝初鴉
△裏木戸を尖る風抜け寒に入る
昭雄
△仰ぎ見るほどなき山も寒に入る
○鶏を一羽つぶして寒の入
○百の尾が垂れて牛舎の寒の入
初鴉輝やふ今朝の濡れ羽色
△初鴉嘴打ち鳴らす大鳥居
幸子
△息災を願ふ鏑矢弓始め
△縁日の果て寒鴉何処より
田うらうら吾が者顔の寒鴉
○罅割れの土蔵の壁や寒の入り
△小坊主の声甲高く初読経
△ひらがなで記す草の名七草籠
△餅花や自在の魚の黒光り
ブロッコリぼこぽこ浮かべ煮るシチュー
○丸薬を飲むや寒九の甘き水
初鴉歩くごみ無きごみ置き陽
信子
寒に入る水に滲ます水絵の具
寒晴れや訛りで記す伝説碑
△見霽かす関東平野初鴉
土塊をしつかと咥ふ寒の芹
○推敲のことばあれこれ寒九の夜
憲
△願掛けの鐘撞く女寒の入
○靴下を履かぬ若者寒の入
月冴ゆるしんしんしんと寒の入
ドア開けて襟立ててゐる寒の入
声太く街を奏でる初婚
朝明よし遠音果して初鴉
△凍てつきて小銭の滑る神の池
大津絵の鬼の念仏狐罠
地の震ひ虚空剥がるる寒さかな
○寒に入る音の乾ける禰宜の沓
良人
△富士望む城址に羽撃つ初鴉
△常盤木の本葉色映え寒の入り
△日の出でて広田に踊る初鴉
△煌煌と光る北辰寒の入り
△きざはしに面をあげてご初鴉
敬子
家業継ぐ子は大盛の七日粥
△懐手解きて発止と打つ碁石
△箱膳を炉端に運び父の里
△吊橋に塑像のごとく初鴉
△金柑の煮詰まる香り寒の入り
△あや取りの糸解れざる寒の雨
△おはじきの玉の七色冬の虹
掃き納め高く暮れ行く県庁舎
△赤札の更に半額年暮るる
強将や野菜いよいよ甘味増す
憲巳
寒の入り湯船の曇る朝の風呂
不景気や漫才を見て三箇日
△初鴉年寄り集ふ村社
牧場も畑も林も明けの春
△羽黒山晴天なりて初鴉
芳子
行く人のうしろ姿や寒鴉
大欅静かにならぬ初鴉
△室咲きの葉脈黒く水を吸ふ
鐘の音の始まりは何時去年今年
ちちははの星かがやける寒の入
△気忙しく薮を賑はす三十三才
豆剣士熱気溢れる初稽古
徹夜して仕事終へれば初鶏
節電を考えつつも寒の入
稜線を刻々上がる初日かな
喜市
いとほしく鉢にかけるや寒の水
里山は白きうす衣身にまとぶ