第148回 平成21年02月15日



   利孟
 北窓を揺すりてすさび春一番
 吐息つくでもなくふくれ紙マスク
 班雪山頭巾色失せ辻地蔵
 ねこやなぎ気合飲み込み打つめんこ
 春浅し区画小分けに町の墓地

   ともこ
○啓蟄やドア開放の押しボタン
★音浅し出窓に開く鳥図鑑
○薮椿東司へ通る渡り廊
 蒲の芽や鮫の背の石伝ひ
 猫柳大手寺町川隔て

   芳子
★文机の墨のにほひや春障子
△日を受けてひかる長堤猫柳
△吉報は東南よりと初御籤
△空澄みて金縷梅の黄の溢れけり
△回廊の床の冷たき浅き春

   ミヨ
 堂塔をかすめ鳶の輪重ねゆく
★鉄橋の音のこそぐる猫柳
△春めくや矮鶏そそくさと鳥屋に入る
 酒の炎を浮かべし紅茶浅き春
△青麦の風は身の丈遠筑波     

   鴻
○蘆の角清水の流れ丈競ひ
△畦道や部落総出に芝を焼く
 老夫婦しばし立たずむ猫柳
△蘖の薄黄緑や小雨降る
△早春の川面波立て鯉の群

   聖子
 山頂の雲の分厚さ春浸し
 回収車「あの町この町」春の朝
 途切れなく届くファックス日脚伸ぶ
○屏風絵の百花百様春の宿
△ふる里の一両電車猫柳

   登美子
△猫柳あきるを知らぬ立話
△畑土の黒く艶やか春近し
△素つ気なく壷に挿しをく猫柳
 ふむわりと花屋の包む桃の花
△巻浅し鍋のスープに塩足して

   信子
△少女等の膝上ブーツ草萌ゆる
△機を織る音の連なり春浅し
△冴返る袖が四つの犬の服
 掛合ひの値踏み聞き入る福だるま
△物知りの爺の声高路地焚火

   敬子
△湖に向けてオカリナ早春譜   
△赤白の南天溢る異人邸     
 渡し場に舟繋ぐ杭猫柳
 赤コート友と奇遇の竜飛綺
△露天湯に手話の湯しぶき春浅し 

   幸子
 まだ多き北の風向き春浅し
△荒草の擾げし土や春浅し
 小社にあげて光りの猫柳
△朝風や瀬音に震へ猫柳
△安らけき母の寝息や猫柳

   良人
 糠雨に真珠と紛ふ猫柳
△陽をかへし瀬音に踊る猫柳
△春浅し畑に渦なし土埃
△猫柳撓みて見せる風の芭
 畦畔に更の足跡春浅し

   昭雄
 父と子の絆川辺や猫柳
 雪浄土湯に浸かる如墓浮ぶ
△御仏の眉のやはらか描柳
 春浅し埴輪の口の半開き
 春浅し切手に鳥獣戯画の猿

   憲
 蜜蜂やどこへ飛ぶのか春浅し
 いらつしやいとカウンターに描柳
 猫柳川風に揺れ季を知る
 公園の木々は裸や春浅し
 不況風いつまで吹くや春浅し

   比呂
 猫柳風の操る湖の波
 同胞を逝かせ百日名草の芽
 妹の柩に春の花溢れ
 銀の余寒の笛の細音かな
 庭ぬちに風の落ち合ひ春浅し