第149回 平成21年03月15日
石蔵に鏝桧の恵比須長閑けしや
うららかや泥の野菜に水かけて
つけ放すラジオに時報春炬燵
彼岸会の布施米と書く熨斗袋
かな書きの河川名板水ぬるむ
信子
一杯の朝の水飲む彼岸かな
△恋猫の夜更けの声のそこらぢう
★梅が香や源氏絵巻の金尽し
○受診待つ膝に畳みし春ショール
なつかれて子犬抱き入る春炬燵
ともこ
△春の雪訃報緊急回覧板
△返却日迫りくる本春炬燵
△街路樹の空は素通し古巣かな
★入り彼岸泥の散らばる勝手口
△虹色の水撒く如雨露春の庭
久しぶり人に仏に彼岸かな
△湯のたぎり笛鳴る薬缶春炬燵
○背を反らし薬飲み込む春炬燵
○寒もどる逃げた錠剤探す指
△阿弥陀籤負けてお使ひ春炬燵
一構
△故郷のいづれ向いても杉の花
○エアメールに女王の切手春炬燵
那須はよし蔵屋敷にも初桜
△勅他門の錆し錠前彼岸かな
△まさおなる空に初花入社式
永子
○板塀のつづく路地裏春の泥
△くねりたる川に溢るる雪濁り
黒々と浜に波打つ若布干し
△香煙の四方に彼岸の石畳
△よろづやに客待つあるじ春炬燵
△潮騒の日毎昂り春彼岸
○せせらぎの音に育ちて蕗の薹
楽隠居顔の猫ゐる春炬燵
△微睡みて束の間の夢春炬燵
△種尽きぬ思ひ出話春炬燵
ミヨ
○お中日虎の絵柄の燐寸箱
△手の届く距離に物置く春炬燵
焼さざえ遥かな朝の残り汁
乳垂れし枝より生れて銀杏の芽
△どの道も海へと抜けて菜花雨
昭雄
○春炬燵仏滅といふ安息目
奏づるといふほどはずむ山葵沢
△裏返るままの折鶴春炬燵
彼岸寺老いも若きも賑やかで
△四手網吊りて繕ふ彼岸かな
阿弥陀堂の香の十徳彼岸入り
△野仏のほとりほつほつ犬ふぐり
折々の趣味の手ほどき春炬燵
○春田打つ標高千の上州路
大樹下に光りかしづく姫椿
良人
△蕎麦店に長き行列彼岸かな
△あくびする猫の顔出す春炬燵
△風吹ける谷戸へと彼岸参りかな
礼服の古染み目立つ彼岸かな
朝雨に木肌黒ずむ彼岸かな
鴻
△合掌の千体地蔵風寒し
困らせているとは知らず春炬燵
全国の句友と語る春の宴
△残雪の殺生石に立つ妖気
懐かしや彼岸団子の母の味
旅立ちに胸の高鳴る彼岸かな
彼岸墓苔むす墓石家系知る
同居する涙と夢の彼岸かな
出し入れや三寒続き春炬燵
春炬燵急ぎ取り出し蜜柑なし