第159回 平成22年03月22日
レ鶴帰るふはと綿羽漂ひて
レ身も袖もプリーツ仕立て春コート
彼岸会や鉦の余韻を追ひて経
藩校でありし高校霾ぐもり
筍を狩る四つ這ひに地を撫でて
昭雄
△籾殻に埋もれ見舞ひの寒卵
レ機織りし一羽もをるか鶴帰る
レ裘ビルの鏡のなか通る
レ霾ぐもり素焼きの器捨て積みに
ツンドラにおほきな夢や鶴帰る
一構
レケーキ屋は支那の末裔霾ぐもり
レ時差つらきバスの乗客大黄砂
レ渡良瀬は墨絵ぼかしに霾ぐもり
レ霾や日出づる国の空濁し
霾風や渡良瀬万里目覚めけり
レ夕空に影絵の如く鶴帰る
レ鳥騒ぎつづけ盛りの藪椿
春の川叉手投げ捨てて砂遊び
霾や石碑清めて墓参り
敬子
△札所巡る紅白梅の香の中を
レ霾るやゴビの砂漠に対峙して
レ引鶴や父築山に手をかざす
レ転た寝に鳩の声かも春炬燵
憲
黄砂濃し遠近景の隔てなく
霾に遭ひ髪に手をやる女性かな
鶴引きて一段落の鶴の郷
先見えず右も左も霾に似る
再会や望郷の念鶴帰る
○霾や皆同姓の吾が故郷
△卒業の腕にかかへる記念品
△灯台も人も豆つぶ鶴帰る
レ霾や肩をすくめて展望台
レ霾や朱のあざやかに大鳥居
登美子
△銅山の錆残る高炉や霾ぐもり
△霾や地蔵の肩の打たれ疵
レパン屑にあつまる雀納税期
レ渡良瀬の流れ銀色鶴帰る
レ霾や琵琶をかかへて留学生
ともこ
△鳶の舞ふ空を乱して霾晦
梅日和撫で牛の背を撫でてゆく
白菫ブロツク塀の裾じめり
モザイクの欠片の岬鶴帰る
不揃ひの薬包みの花の種
△女教師の顔半分の白マスク
レお中日一日荒れたる彼岸かな
レ旅の朝のブラックコーヒー鶴帰る
レつちふるや地下鉄しばし地上にて
レ春逝くや振り子ゆつたり大時計
比呂
レ鶴引きて後の水輪の白じろと
レ陽炎に人撓ひては伸び縮み
レ春の日の迷ひてはまた戻る路地
レ黄砂来る文字伝来の道辿り
レ親しめる近くの他人茎立菜
ミヨ
△引鶴の声連々と陸昃る
レ飛び石にかたまり萌えてこぼれ種
レ春尽くや土鈴の音の湿りがち
レヒマラヤを越える風読み鶴帰る
角笛の息胸高に宵の春
筑波嶺をわづかに臨む霾ぐもり
碧落に引鶴の群飛び立ちぬ
つちふるや遠山隠す靄の袈裟
つちふるや夕日つれなく赤々と
つちふるや野田に水音籠もりゐて