第160回 平成22年4月17日


  利孟
 縫ひかけの形見の着物おぼろかな
 満開の標準木といふ桜
 花の川腹に砂利積むダルマ船
 朝昼にお茶の時間や土佐水木
 花の無き湧き参道の花の宴

  信子
★春行きつ戻りつ青魚捌くかな
△土佐水木むかし庄屋の長屋門
・月おぼろ夜通し灯るナース室
・晩春や俄に声の朝鴉
 行く春や教会揺らし水溜まり

  聖子
△春菜播くはやふつくらと畑の土
△花冷えや一人芝居の粗化粧
・雨の朝栃の新芽の総立ちに
・夕桜一人芝居の李麗仙
 花吹雪ゆつくり渡る交さ点

  ミヨ
△梁にコードむき出し武具飾る
△初蛙土管に声を太らせて
・和太鼓のあやなす撥や養花天
 修復の小暗き寺や土佐水木
 とば口に残る燃え止し春暖炉

  比呂
・鐘朧山川草木みな仏
・巻き髪の忽と絡まる花豌豆
・土佐水木仏足石の真たひら
・きんぽうげ長く伸ばして山羊の紐
 おぼろ夜や酒屋のくぐる葷酒門

  ともこ
・霧雨を纏ひて垂るる土佐水木
・逃げ水を渡る野鳥の小走りに
・牛乳のタンク車過り草朧
 花辛夷畑黒々と畝の波
 点々と道に土塊朧かな

  昭雄
・音もなく開ける和箪笥朧の夜
・初蝶来軋みしづかに舫綱
・諍へる男体山白根山笑ひけり
 土佐水木風通し良き身八口
 母眠る朧夜にある不安かな

  鴻
・日の当たる土手を独占して蓬
・藁屋根の農家を囲み土佐水木
・老夫婦ひねもす睦み芹を摘む
 記録的晩雪喜ぶ仔犬達
 田圃道稽古帰りの月朧

  敬子
・尼寺の鐘もおぼろに六地蔵
・演奏会果てて朧の月に逢ふ
・巡礼のしばしたたずみ土佐水木
 いぢめ除け観音前に母子草
 虚無僧の訪れかとも編笠百合

  登美子
・芽起しの小糠雨降る銀座かな
・土佐水木ふれなば雫袖濡らす
 土佐水木垂るはしずかな枝の先
 放課後を「初恋」歌ふ友おぼろ
 気どらない銀座の柳若みどり

  良人
・土手を埋めつくす野花のおぼろなり
・土佐水木帯紙光る新刊書
 手を合はすおぼろの口紅の朱唇仏
 朦朧と春月いまだ杜の上
 おぼろ月白き小花を房に見せ

  憲
 月に雲昼はかすみて夜おぼろ
 居酒屋やほろ酔い酒に朧かな
 朝きても床を出られず朧かな
 土佐水木庭無き家に白恋し
 白い花寒さにふるえ土佐水木