第162回 平成22年6月27日


  利孟
 父の日のベランダといふ喫煙所
 無限大に廻れと茅の輪祓へかな
 短夜やジャパンブルーにテレビ塔
 浪人生の煙草の虚勢夏期講座
 百日紅泥棒猫の背伸びして

  ミヨ
◎嵯峨野路やときに老鶯ときに鐘
・百日紅軋む扉押して暮るる寺
・雨に増す川音夜っぴて明けやすし
・鱧売り切れどすと書かれ路地格子
・八橋の老舗はんなり沙羅の花

  昭雄
◎短夜の貨車組む駅の汽笛かな
・蔵壁に映ゆるくれなひ百日紅
・何故バッタも少し遠くまで飛ばぬ
・高僧の説法ありと来しが雹
・網干され川風匂ふ短き夜

  信子
○園児みな午睡の時間百日紅
・千仞の谷深梅雨の橋の下
・愛用の靴の片減り走り梅雨
・明け易し森に友好丹頂舎
 収穫の野菜筵に百日紅

  川島
○父の日や父の付き添ふすべり台
・大雨に花うちこぼれ茄子の畝
・短夜や雨音も飽き目覚めけり
・緑陰や青年医師になだめられ
 引越しに取り残されし百日紅

  比呂
○ナースコールはショパンのワルツ明易し
・小振りなる噴水のの字書きつづけ
・雲間より曖昧に出て梅雨の月
 蛍袋の毛ばだち母の文短か
 百日紅病みて言葉の躓けり

  登美子
・雨止んで有りの働く庭となり
・短夜のラジオは古き歌ながす
・地に伸びる四尺あまりの蛇の衣
 百日の風にふるえる百日紅
 あぢさゐの毬めでながら靴ぬらす

  良人
・短夜や始発は笑みの女性車掌
・消防の訓練広場や百日紅
 百日紅野辺の地蔵の時節傘
 点々と門前町に百日紅
 坂道の家々毎に百日紅

  ともこ
・山躑躅木々を行き交ふ青き風
・露芝の柄かた隅に夏蒲団
 勝利記事一面飾り明急ぐ(カメルーン戦勝利)
 誘引を外れさ迷ふ梅雨の薔薇
 長男の家は洋風百日紅

  尾下
・露ひとつ遊ばせてゐる浮葉かな
・白濁の湯屋よりい出し百日紅
 思ひ出の花になりたる百日紅
 短夜や眠れぬままに書く手紙
 絵手紙に収まりてくる百日紅

  敬子
 ひたすらに筆とる耳順明易し
 きざはしは百段あまり百日紅
 日記には世情を少し麦の秋
 森深くテナーの響き夏燕
 金糸梅ふれて幼児の片えくぼ

  憲
 短夜の欠伸出たりし昼寝かな
 滑らかな人の肌より百日紅
 短夜の妻の鼾で昼欠伸
 太陽の光りに花の百日紅
 短夜睡魔が襲う机かな