第163回 平成22年7月19日
香煙に酔ひて新盆棚供養
パナマ帽いささか香る養毛剤
駐車場待ちの行列大暑かな
星合の色糸流す床飾り
熱き風送り来戻り扇風機
於した
◎オートバイ部隊の地鳴り大暑かな
・七夕や星に懺悔をすることも
・七夕竹に仕事下欲しいとあるご時世
ソフトクリームまねて食べたくなつてをり
猛暑なり見る人の無き夏祭り
聖子
◎短冊の糸の長短星祭
うなぎ屋の匂ふ煙や夏祭り
鶯嬢の抑揚なくて大暑かな
挨拶を傘に委ねて梅雨の朝
七夕や山で教へる星の位置
○簀の鮎の見え弾み行くわたり板
○流鏑馬の稽古の木馬大暑かな
・栗の花香れる尼寺の深庇
・太脛の溶岩踏んでゆく山開き
願ひの糸の絡み合ひをり戻らざり
清子
○短冊に書けねど願ふ星祭
・梅雨湿り声高に売るキムチ漬け
・ペンキ屋の目張り念入り大暑中
・退院の馴染みとなりし籠枕
蛇の衣物音ひとつしない家
信子
・大暑かな紅さす唇に息凝らし
・丹田の気合くづるる大暑かな
・七夕や人溢れゐてカフェテラス
・澄む水に己が影引く夏の鯉
万物の影際立ちて梅雨の明
・鉢植えの下葉の傷み大暑かな
・病窓に遠き街の灯星祭
・染抜きの「どぜう」の暖簾大暑かな
・紫の皺の濃淡茄子の花
大西日ドクターヘリの爆音来
一構
・百日紅まつすぐとほる山の風
・宿坊の朝の座禅や明易し
・明易し配達人のバイク音
百日紅部活の生徒声あげて
命日の雨音かすか百日紅
昭雄
・老犬の穴に沈める大暑かな
・黒といふ華麗な衣装揚羽蝶来る
・御神馬の睫の白く大暑かな
七夕や点の雫の墨匂ふ
七夕や村の娘花となり嫁ぐ
・お花畑雲また雲の古戦場
・尺蠖の終の一歩の宙さぐる
・譲られぬ田の水加減冷し酒
霊山へ向かへば炎暑後退り
七夕竹そこだけ明き軒の闇
良人
・餃子屋の瀬戸の箸置き大暑かな
・短冊に大小ありて星祭
夜風来て七夕竹のそよぎけいり
校庭も校舎も無人大暑かな
碧空に光溶け込む大暑かな
登美子
・皿洗ふ水のはじけてて大暑かな
・大暑かな父が丸めた砂だんご
貸本に引かるる朱線夏休み
七夕やベンチの二人相寄りて
炎天や人流れゆく先に駅
・七夕やゴシチシチと数遊び
七夕や恋人とみる勘違い
燃えに燃え挑む姿は大暑かな
食べ物や対処は何か大暑かな
グランドの炎暑ものともせず球児
笠原
・心地よき目覚め襖に止まる蟻
老い犬の腹擦りつく大暑かな
七夕に腕白何をや金の札
我が二票当て所探れど大暑の日
七夕や懐旧の河闇の先