第179回 平成23年11月20日
兼題: 熟柿 小春


     利孟
  釜飯に卵とあんず小春かな
  福一人占めむと掲げ大熊手
  凩のつのり蒼天みだれざる
  斗酒もまた辞さぬ男の熟柿好き
  色変へぬ松や破れ舟破れ漁網

     比呂
☆ 里神楽天の磐戸を紙に描き
△ 小春かな赤の絹糸買ひ足して
・ 毛むくじやらの鈿女命里神楽
  青蜜柑少年鳩を飼ひ馴らす
  熟れ柿や菩提寺蔵す抱き仏

     昭雄
☆ 小春日や桶伏せ終へる厨事
・ 熟柿吸ふ子供ののやうに口汚し
・ 小春日や見えぬ塵掃く作務の僧
  掌中の熟柿の重み畏れけり
  藁塚に埋める夢の熟柿かな

     良人
△ 雲水の高き下駄音熟柿落つ
△ 手を叩き鯉呼ぶ池の小春かな
・ 大谷石の塀に音無く熟柿落つ
・ 暗き瀬の小波消えて小春かな
・ 単線の無人の駅の柿熟るる

     鴻
・ 爽快な朝のジョギング天高し
・ 柿のれん旧家の軒に隙もなく
・ 夕空の熟柿に群れる小鳥たち
  あけびの実農家の垣根にたわわなり
  子の集ひ小春日和の川遊び

     美代子
△ 柿熟るや山河ゆれゐる奧会津
・ 次の間の掛絵も夢二冬館
・ 小春日やきびがら細工きゆきゆと鳴る
・ 子曰くと子等の素読や秋うらら
・ 木鐸を打ち説く論語小六月

     於した
△ もてなしは熟柿一つに匙添へて
・ 式部の身ほろほろ掌に受けて
・ 一差しを舞へば汗ばみ小春かな
・ 小春日や稚児行列のまた伸びて
  今痛み耐へてるメール秋f深む

     聖子
・ 買ひ物のメモを濡らして初時雨
・ 秋惜しむローカル列車乗り継いで
・ 座布団を二枚枕に小六月
・ 籾殻の中に熟して蜂屋柿
・ 小春日のB級グルメの市の列

     敬子
・ 陽を受けて山家の熟柿鈴なりに
・ 柿熟るる窓辺に開く娘のたより
・ 紅白の花が一樹に寒椿
  分校の課外授業や小春空
  合唱の声の揃うて小春凪ぎ

     健
・ 小春かな会話のはずむカフェテラス
・ 山あひの軒をうづめてつるし柿
  いつまでもいつも心に小春かな
  カフェテラス会話と小春ハーモニー
▽ 熟思してまた推敲の熟柿かな