第180回 平成23年12月25日
兼題: 年惜しむ 鮫・鱶
鮫なんて季語もあるんですね、山陰の山の中では刺身で食べるとか
なんと、栃木県でも「もろ、さがんぼ」と呼んで食したようです



鮫喰いびとの勢揃い


  利孟
 オノマトペ尽しの歌も年忘れ
 鮫を食ふ鯉を大魚といふ子らが
 山の神戻りて山の深眠る
 玉葱の甘きかき揚げ今年蕎麦
 誰がつけし柱の疵や年惜しむ

  比呂
☆水槽の鮫流し目に反転す
△畑土の湿りを掴み年惜しむ
・狐火やむかし間引きといふことの
・かたかたと鶲来てをり遅昼餉
・一陽来復かぼちや甘めに炊きあげて

  美代子
☆鰭酒の茶碗の底の海の色
・豆腐屋の喇叭にからむ寒暮かな
 会津杜氏凍夜に醪深く突く
 銀の匙持てばあふるる聖夜光
 手になじむ益子の湯呑み年惜しむ

  ともこ
△時刻む音数ふかに編む毛糸
△二つ割りの丸太のベンチ銀杏散る
・素兔ぴよんぴよん渡鮫の橋
・年惜しむシートのおほふ地震の瑕
・香り立つ柚子を器に茶碗蒸し

  於した
△染め斑の残る髪梳き年行けり
△露天湯に揺るる光りや年惜しむ
・素昆布の重き歯ごたへ年惜しむ
・煮こごりを添へて煮鮫をもてなさる
・紅紫檀赤あたたかき重さかな

  昭雄
△年惜しむ仁王の臍に日の射して
・鮫打ちてはや暮れかかる番屋の灯
・年惜しむ湖に祷りの浮御堂
 冴ゆる夜の鉄路の果村十戸
 稚児侍鮫の小紋の太刀飾り

  郁子
・古書店に見つけし師の書年惜しむ
・渾身の力をつくし欅散る
・鮫並べ朝一時の魚市場
・忍び入りながらも確か隙間風
・大いなる夕陽を浮かべ枯野原

  鴻
・大木の暗き根本や藪柑子
・冬枯れて我が家の庭の音もなし
・店先に並べ鮫の歯恐ろしく
・小昼まで畑耕し年惜しむ
・風もなく小春日和の畑仕事

  良人
・高架鳴らす新幹線に年惜しむ
・街の灯の浮かぶ川面や年惜しむ
・落日に浮かぶ遠富士年惜しむ
・またたける北斗の星に年惜しむ
 夕食のモロの煮付けに母を恋ふ

  恵子
・飴色となり干し柿の桿に満つ
・大根を洗ふ背なの子揺すられて
・手を赤くして大根の泥洗ふ
・解き刻む音の聞こゆる冬至かな
 歳の瀬や山下達郎街に聴く

  敬子
・聖夜劇主役の赤き蝶ネクタイ
・第九聞き帰る夜道や月冴ゆる
・姫椿娘の帰国日を日めくりに
 絵手紙の温もり届く年惜しむ
 青鮫の海をとばして空を切る

  健
・かまぼこといふ名に鮫の変身す
・年惜しむ陸前高田に残る松
 鮫皮の鞄に名刺と携帯と
 年惜しむ瓦礫は津波の落とし物
 年ごとに走馬灯たる年惜しむ