第182回 平成24年2月19日
瀧凍てゝ水にねむりの刻もどる 重次
指先に手水を使ひ午参り
日向ぼこして客待ちの運転手
紀元節旅券の若き顔写真
ハイヒール雪解の歩道渉りゆく
探梅や車片寄せ谷戸の道
比呂
●山鳴りは山越す気配雪女
●雪解風百亀甲の鉄結城
▲不器量の人形焼きや午まつり
▲初午の風弄ぶ貸家札
▲銹いろの野に雪しろの川現るる
信子
★温灸の小さき火香り雪解風
●息白く降り立つホーム旅の駅
▲注がれたる白湯の香りや一の午
▲朝月夜鉄塔仁王立ち寒し
▲凩やてを触れ開く自動ドア
★集落を繋ぐ轍の雪解かな
▲風に乗り遊ぶ雪虫和紙の村
▲捨畑のまばらに八溝一の午
▲正一位の旗音あらき午祭
啓蟄の空をはなさず乙女像
良人
★初午や鳥居一つの屋敷神
▲のんびりと浮雲運ぶ雪解風
▲雪解の谷に瀬の音風の音
野焼きの煙立ちて流離を始めけり
雪解川浅瀬残して笹にごり
昭雄
●独り酌む二合半酒や雪解宿
▲高台を愛でらる茶碗遠雪崩
▲鳶高く舞へる那須野や雪解晴
雪解渓月玲瓏と渡りけり
初午の谷戸の奧から木遣唄
●凍返る金魚の尾鰭動かざる
▲春暖炉鮭の頭の煮崩れし
▲雪とけてセーラー服の仕付け解く
薄氷踏めば手応へなく割れて
初午の大鍋湯気を噴き上げて
敬子
●料峭や橋場の車夫の細き肩
▲洋花の名前を覚え二月尽
▲水車小屋ゆるきしぶきの雪解水
紆余曲折うす陽にあはき冬すみれ
初午や里に継がれししもつかり
登美子
●雪解けや朽ち葉は土に還りゆく
▲雪解けや色のあふるる洋菓子屋
雪解けや見捨てし草の立ち上がる
初午や銀座詣での美男美女
初午や何筆頭の願ひごと
▲水底の流れ激しき雪解川
▲一段と声増す恵方鬼やらひ
▲針供養仕立て直して母のもの
梅咲くや一輪ごとに香をひろげ
初午や盆にのせたる郷土食
聖子
▲雪解けの轍に揺れて小型バス
▲ぬかるみに泥靴重き雪解道
▲初午の祠に松葉たまりをり
日脚伸ぶひねもす職場研修会
滝氷柱裏一筋の水光り
鴻
▲残り鴨岸に集ひて羽づくろひ
▲立ち並ぶ朱塗りの鳥居午参り
帰り鴨鈎の曲がりを変へながら
麦青む畑に向かひて立ち話
谷川の日ごとに増すや雪解水
▲皇居前広場さわがせ春一番
▲初午や祠の灯し揺れどほし
しわの手を孫に預けて雪解道
本流の水嵩を増す雪解かな
初午や踵を上げて結ふみくじ
健
▲初午や寿司を供へる赤鳥居
雪解けの水のあふるる神の水
雪溶けや時は流れて仲直り
午祭早昼に喰ふいなり寿司
清々と雪解け水の山歩く