第183回 平成24年3月25日)
兼題: 雛祭り 菜の花
菜の花の一汁二菜おままごと
花菜漬け出さうで思ひ出せぬ夢
雛祭り嗚呼女子会といふさはぎ
探梅や遅延の電車を待つ列車
桶の闇乱して水を吹き浅蜊
昭雄
☆拳より眠くなる子や雛祭り
・菜の花や手打ち蕎麦屋に夢二の絵
・菜の花や那須野はるかに御用邸
・平成の生まれが飾る享保雛
菜の花の海からあがる肩車
聖子
☆ままごとの余所行き言葉春の風
・雛日和主婦の仕事の終り無く
・やわらかき雨降り続く春暖炉
・川風に乗りて菜の花うなづいて
大鉢に菜の花活けて書道展
△石段を壇に見たててひな祭る
△空に鳶海に波音吊し美名
△那須岳の峰に薄ら陽雛祭
・吊るし雛伊豆の入江の波静か
鈍色の山懐のひな祭
比呂
△落椿揺るる行者の腰草鞋
・如月や昼も小暗き銃砲店
・霖雨して大涅槃図の巻き疲れ
・雛あられこぼして嬰の這ひ回る
靄はれて名の花色の風の土堤
ミヨ
△大地震に止むなき離村辛夷咲く
・御宿や月の砂漠の詩おぼろ
・菜の花や門前横町西東
・遠蛙筑波山は闇に横たはる
共蓋の赤絵におやか雛の膳
△廃屋に虫穴を出て一文字
・老夫婦内裏雛のみ飾りおり
・菜の花の畑一面に黄絨毯
・いつまでも厚着やむなし遅き春
一列やカギ型になり鳥帰る
信子
・雪陵の海見据え居る尾白鷲
・列車発つストーブの烏賊炙られつ
・吹雪浜陸に列なる漁舟
・サハリンの風哭く浜や雛の宿
岸離る婚礼舟や花菜照り
芳子
・ハングルは絵文字のごとき猫の恋
・踏みしめて踏みしめて行く春の畦
先づ買ふて愛でたる色や桃の花
菜の花やジーンズ姿走り抜け
掛軸を飾りて仕上ぐ雛の間
・雛祭り戦火逃れし土人形
・店毎の看板となり雛人形
菜の花や黄色の絵の具買い足して
菜の花や指先見えし学生服
塩結び頬張る先の菜花かな
登美子
・菜の花や盛りに少し愁ひあり
・ひなまつりみんなやさしくつつましく
菜の花を追われし蝶の戻りけり
ビル街の箪笥の上の雛祭
身に叶ふ土産のひとつ花菜漬
敬子
・幼稚園手作り雛の雛祭
江戸雛飾る米寿の祖母の笑み
緩急の指揮大らかに早春歌
受け流すことも幸せ黄水仙
鎮魂の地蔵を拝す花菜風
・雛祭り白酒に酔う親父かな
天は青菜の花咲くや地は黄色
菜の花を家族で食す絆かな
室内に飾る菜の花香り満つ
被災地や潮染み雛悲しげに
於した
雪あかりさしてひひなのほの白く
高ぶらず菜の花どこもかしこにも
囀りに親子の会話ありしかな
やはらかな風に色増す花菜かな
しげしげと見つめ雛にも笑みのあり