第184回 平成24年4月15日
兼題: 端午 桜


   利孟
 酒蔵を守るが家業桜守
 箱追ひて乗る観覧車端午の日
 五月鯉青や緑といふ真鯉
 弁当を選るに惑ひて春ショール
 鉄瓶の動かぬ鉉や花筏

   登美子
△天上を指す手しつかと花御堂
△端午の日蔵の戸軽く引き開けて
・来賓の長き祝辞や花開く
 校門と桜そのまま陽の中に
 花の夜舞子と登る昇降機

   聖子
△夜桜を見んと口紅塗り足して
・幔幕に囲はる人や花吹雪
・産声の流る端午の朝かな
 満開といふおそろしき花の数
 岩間より川面へ垂るる桜かな

   比呂
△腹掛の○に金の字初節句
・履き物の中の砂粒万愚説
 花の寺ご本尊には無き由緒
 風に嘶く八幡太郎の幟旗
 そんじよそこらの桜にあらず滝桜

   ミヨ
△ゆく春や身をからめ織るいざり機
・鯉幟不乱の筆の大眼
 二子仏長けて俯く黄水仙
 肩章をただす守衛や花三分
 苔むして寝釈迦ゆたかに二重顎

   一構
△声高な内緒話や花の宴
・高みより桜蘂降る宿の朝
 工場の直なる煙花実かな
 光芒の光ひしめき山桜
 夕桜老の一徹貫けり

   信子
・花の雨蕎麦屋に回る石の臼
・小糠雨孝子桜のひた咲きて
・花冷えや息を静かに心電図
・靄晴れてみ山耀ふ端午かな
 月央に金星木星よいのはる

   郁子
・初ざくら朝のパン屋の窯香る
・中空に少しの風やおぼろ月
・すがすがと風のかよへる端午かな
 五月五日わが青き空青き山
 車椅子枝垂れ桜の影の中

   於した
・撮る人が撮られる人に桜散る
・暮時のひと際淡き桜かな
・風止みて居住い正す桜かな
 花冷えや琴の奏者のドレスかな
 威風堂々枝巡らせて老桜

   良人
・桜守野路の地蔵の前をかな
・高遠の空を閉ざして桜咲く
 耕運機端午に音をまき散らす
 水枯れの川の堤に桜満つ
 杉並木杉に宿りて桜咲く

   昭雄
・沐浴の子の足暴れ勝負の湯
・風船と引つ張り合ひて子の手首
 日が月が立ち寄る野辺や犬ふぐり
 大物のけはひ湯を蹴るたんごかな
 ひとひらはせめても墓へ散る桜

   敬子
・初節句女系の家の男の子
 舫ひ舟とかれ偉人の桜狩
 たくましく育ちし双子初節句
 オカリナの響くホームや玉椿
 それぞれに生きて夜桜ワイン酌む

   健
 人はみな成長願ふ端午節
 怠け者節句に働く端午かな
 観桜や日和の風に花揺れる
 桜散る定年すぎし人となり
 行き掛けの駄賃となりし桜狩