第185回 平成24年5月20日
兼題: 牡丹 夏の山



  利孟
 夏の山行者に随いて山ガール
 青山椒炊いて味見といふしびれ
 桐の花足湯の底に白き砂利
 指揮刀の桜と錨南風
 咲き満ちて首のすはらぬ紅牡丹

  信子
☆口開けて開けて子燕育ちけり
○春風や腰に遊ばすフラフープ
・夏の山馬ノ背越えの空の青
・白牡丹ほろほろ山の日が暮れて
 行く春や暮れゆく空の遠妙義

  登美子
☆牡丹の崩れて重き香をひろぐ
○蛇進む総身の長さ見せながら
・牡丹の崩れ無念の萼さらす
・牡丹の根元に白の散華かな
 誓ひ立て見あぐる額や時鳥

  ミヨ
○鉱毒の山の疵痕青嵐
○琺瑯の駅名標や薄暑光
・盛り塩にととのふ軒端夕牡丹
・ショーウィンドウ飾り終りて来たる朱夏
・青嶺出て那須野台地を分かつ水

  郁子
○県境のここが源流若葉風
○木漏れ日を額に頬に栃若葉
・若葉雨いよいよ森の深きかな
 風を抱き牡丹崩るるごとく散る
 夏の山抜けて光の湖に立つ

  於した
○柿若葉てこづつた子に労はられ
・葉脈に緋色にじませ紅牡丹
・添木して径一尺の牡丹咲く
・すれ違うたび止まるバス夏の山
・牡丹の綾なす花弁閉づ夕べ

  芳子
○蝌蚪寄りて見ずに力の溢れ来る
・牡丹の紅色こひし人恋し
・目薬の冷たくしむや花の雨
・県境トンネルを抜け夏の山
 古戦場わが身震へし古戦場

  敬子
○花冷えや異人手を組み蔵の町
・牡丹咲く縁の語ら夕灯し
・薫風や小鳩の憩ふ観音像
 神籤ひく鳩のはばたく夏の山
 巴波川夢を託しえ鯉幟

  比呂
・いまだ雪残る奥峰夏の山
・採りたての野菜売り場も牡丹園
・夫婦には血脈は無し桜の実
・膝打ちて謡ふ浦島杜若
・剥製の鳥啼き出せる西東忌

  一構
・立山の残雪里に山桜
・牡丹の花をくづして雨滂沱
・雷鳥が二羽の出迎夏の山
・地図になき道に踏み入り夏の山
 夏山のゆりぎし岩を踏み渡る

  昭雄
・乳鋲の大き城門牡丹咲く
・乳飲子の皓歯零るや白牡丹
・山また山そのむかふまで夏の山
・恋心秘し差す紅や白牡丹
 夏の山罠かけしまま昏れ残る

  健
・花咲きて疲れを癒す夏の山
・夏の山変はる天気に従ひて
・親子鯉川面に映り端午かな
 健やかは端午のためにありしかな
 鯉幟なびく姿は男の子

  良人
・谷川の流れ音増す夏の山行者に
・牡丹開く寺に鐘の音山の音
 遅咲きも時節の花も夏の山
 大牡丹時節の花を小さく見せ
 透かし見る頂上間近か夏の山

  鴻
・紅牡丹一輪庭に君臨す
 夏の山清流山峡迸る
 上がるほど増せる輝き御来迎
 機械化や一夜明ければ青田かな
 地面まで先端届く藤の花