第186回 平成24年6月24日
兼題: 夏羽織 薄暑
大蜘蛛を箒で逃がす朝薄暑
立ち手水に掛けた手拭吊忍
肩すべり気味に纏ひて夏羽織
ハンカチにアイロンをかけ梅雨籠り
病葉を掻く作務僧のゴム草履
郁子
☆追憶はいつもモノクロ街薄暑
・カステラの紙をはがして梅雨ぐもり
・麦秋の大地を鬼怒川の遊行せり
・崖雫して藍深き額の花
夏羽織似合ふ男の丈高き
一構
☆苦瓜の蔓暴れるをはばからず
・薄暑光豆腐一丁買ひ求め
・木道に走る学童薄暑光
起き抜けにシャワーを浴びる薄暑かな
ここもまた池塘に咲くや水芭蕉
☆甲冑の瞳の無き睨み夕薄暑
・気紛れに引きし神籤や薄暑光
・人力車薄暑の古都をひた縫ひに
まさおなる空引きよせて犬ふぐり
夏羽織裏地に隠す男粋
信子
☆心柱浮かせ五重塔薄暑
・一徹の背筋老爺の夏羽織
さくらんぼ女ばかりの旅時間
手料理に隠す一味夕薄暑
三二一ゼロ日食は今金環に
登美子
・朝食のパンと牛乳薄暑かな
・夏羽織重ねて好きな帯を選る
・夏羽織風は気ままに吹き抜けて
・薄暑なり磨いた匙と銀の盆
祖母叔母に箪笥から出す夏羽織
・大水車夕焼汲みあげつつ昏るる
・手作りの武骨な杖や夏羽織
・布目立つ陶板並ぶ薄暑光
巫女が鈴振りてお浄め夏祓
梅漬けの小屋ごと醸す日和かな
良人
・境木に並びて五位の動かざる
・筑波嶺の雲を見遣りて鮎を追ふ
・台風一過鬼怒の河原に鳶の舞ふ
覆ふ葉の翳りに浮かぶ栗の花
老僧の法事帰りの夏羽織
比呂
・新米の名無き引き馬走り梅雨
・バケツにて届きし雑魚や夕薄暑
水幽み軋る舷夕立来る
棚田植う千の絣を織るやうに
夏羽織脱ぎて清らに枕経
・閑古鳥尻尾上げ下げ鳴き踊る
・狼藉のかくも水鶏の鳴きつのる
自転車で走る僧侶の夏羽織
日一日緑色増す青田かな
夕薄暑川辺散歩の家族連れ
敬子
・新しき俎板四角の西瓜きる
・鴨居までとどく身の丈夏羽織
夕薄暑駅へ駅へと下校生
聞き役の笑ひも一つ樫若葉
ダンスパーティ垣根の薔薇が今盛り
芳子
・鮎釣りの早瀬煌めく日差かな
郷を出て過ぎし歳月薄暑かな
初簾吊るして風の広がりぬ
成し終へて折り目の固き夏羽織
見はるかす植田のみどり空を上ぐ
・ドライブの窓開け放つ薄暑かな
街中に涼をよびこむ夏羽織
薄きもの身は軽やかな夏羽織
風去りぬ肌に優しき薄暑かな
一服のたばこに似たる薄暑かな