第187回 平成24年7月22日
兼題: 葛切り 夕立 


  利孟
 水槽に群れて相ひ和し囮鮎
 青田風茶屋名物の麩饅頭
 菅笠と杖の濡れゆく夕立かな
 塗り椀のくず切恭しく喰らふ
 夏安居の護摩堂護摩木積み上げて

  比呂
☆青梅雨や牛の眼の藪にらみ
△百年の艶なす柱冷やし葛
△風伯と雨師の競ひて大夕立
・どぢやう割く男の下駄の太鼻緒
 たはやすく地まで撓りて今年竹

  敬子
☆父の日や父の着擦れの剣道着
・葛切のつるりと滑る切子鉢
 凌霄花手風琴の音に舞ふ
 韋駄天の追ひ立てて来る大夕立
 菜園のまなか彩どる夾竹桃

  良人
△夕立後入り日山端に色を増す
△鳥低く飛び夕立の気配かな
・街路樹の枝葉散らして夕立去る
・くずきりや和菓子老舗の幟旗
 一跨ぎ鬼怒川を越え来る夕立かな

  信子
△菜園に支柱林立夕立雲
・ひまはりや自画像真正面向いて
・滴りや迷路となりし廃れ坑
・実を為して柘榴の花の散り止まず
 葛切や思ひ出話ぽつぽつと

  昭雄
△男体山も鳴虫山も夕立かな
・男体山の馬の背を分け夕立かな
・葛切に太き黒文字雲厳寺
 夕立ちや季の移ろひをつぐるごと
 葛切や三人姉妹薄化粧

  聖子
△夜濯や皺打つ音を響かせて
・万年筆のインクの匂ひ葛ざくら
 里山道畦の刈り草踏み帰る
 どの窓か切なきピアノ夕立来
 干草の風来て嬰の深睡り

  登美子
・夕立ちや僧の駆け込む無人駅
・夕立あと西日に光る瓦屋根
・バリウムに膨れた胃の腑夕立雲
・葛切の箸にかかりてふるへけり
 夕立に車の行列道帰る

  鴻
・夕立や天水桶を溢れ出し
・葛切りや父の武骨な手の動き
・色形様々庭のトマトかな
 母親に周囲かこまれ子の御輿
 渓流に岩魚つり上げ恵比須顔

  一構
・夕立ちや待合室の窓の鳴る
・生ビール経済危機など一くさり
・葛切りや老人ホームは昼休み
 禅庭花さざめくごとく雄国沼
 葛切りや母の手の皺なつかしく

  ミヨ
・夕立雲背より追ひ来る丸木橋
・滴りや銅山によいとまけの歌
 三段の滝音かかふ嶺のねむり
 昨夜の雨ぶつかる縁の夏あざみ
 葛切りの膳の上りや談義僧

  健
・それ急げ夕立くるぞと物干場
 ずぶ濡れや待てば遭はずの夕立に
 むかし夕立いま集中豪雨かな
 哀れむや葛切り食す縁側で
 葛切は澱粉質の栄養素