第188回 平成24年8月19日
兼題: 初秋 初盆 



  利孟
 包丁を研げば鉄の香秋初め
 盆波や浜の高みの船轆轤
 朝涼のバタ付パンにミルクティー
 むずかる子皆がおだてて初盆会
 窓に足上げトラツクの三尺寝

  昭雄
☆ねむごろに畝刈り迎へ初盆会
☆初盆の双子の姉の泣き黒子
△初盆の光りかそけき奥座敷
△初秋や筆先かるく止めおいて
・魚影のつつと走れる初秋かな

  信子
☆茄子の牛戸惑ひ浮かす足一つ
・筑波嶺の女体男体秋はじめ
・かまつかや俄に来たる山の雨
・新盆の犇きあへるお線香
 朝の蝉降り出す雨の本降りに

  比呂
△建場てふ素泊り宿や白木槿
△新盆や妣の朱文字の残る墓
・苧殻焚く風の繋げる死者生者
・日本名は鬼怒鳴門広島忌
・初秋や小花模様の試歩の杖

  鴻
△糸瓜棚地面に届く実をつけて
△五つ六つ思い通りのメロンかな
・初秋の朝には見えて白根山
・持てぬほど大きく育ちたる南瓜
 新盆の好みし供物あれこれと

  聖子
△ふるさとは闇濃き虫の宿なりき
・旧道を曲がれば里や迎へ盆
・初盆の顔ぶれ知らぬ人のゐて
・初盆や何やら老いた顔ばかり
・スカートの裾濡らし入る花野かな

  郁子
△城山に走る谺や揚花火
・初秋の音を掃きゆく簿竹箒
・八溝嶺の黒き稜線誘蛾灯
・かなかなの鳴きて洗濯機の止まる
 朝涼の路地路地にある無言かな

  良人
△新盆や田中の細き舗装道
・初秋の北より寄せる鰯雲
・門脇に背腹つややか茄子の牛
・新盆や釣人溜る大河原
 初秋や鬼怒川の流れの先の富士

  敬子
△休診の医師の真顔の金魚釣り
・新盆や僧そそくさと来て読経
・香炉灰均し初盆迎へけり
 初秋やピアノソナタの洩るる窓
 改装の夕風招く釣忍

  健
・初盆のふるさと遠く渋滞す
・初秋や風の音こそさやかなれ
 初盆や急死の姉と語り合ふ
 初盆や袋の中身悩みけり
 朝と晩ひんやりしたり初秋かな

  ミヨ
・雨情の碑風の踊らす百日紅
・おくれがちに唱ふ心行夏木立
 久方に摘む地火照りのトマトかな
 皆寄りて繰れる大数珠初盆会
 初秋や濃き日薄き日貨車の影

 









月例句会が終って宴会開宴までは時間がありましたので、
急遽席題句会
お題は「やま(山)、白」で各1句出し


  利孟
夏ノ日ノ思ヒ出原稿用紙二枚
蚊遣火やまだ始まらぬ離乳食

  郁子
消えてゆく虹に余白をつくる空
山間に一際映えてねむの花

  昭雄
新涼の山車曲がりけり軋みけり
白雲の流る八溝嶺秋高し

  信子
ほのぐれの風の重たき白木槿
浮島に届く山影秋涼し

  比呂
白昼夢牛の微睡む闘牛場
半眼の白衣観音秋の声

  ミヨ
山越えや霧の奥なる一軒宿
隧道や朽杭生ふ白きのこ

  鴻
山脈秋一色に衣替え
朝日受け白妙の富士輝けり

  聖子
骨董市白磁の茶碗夏座敷
稲光山々を背に高速道

  良人
山寺の境内埋める白木槿
初秋や男体山覆ふ雲はなく