第189回 平成24年9月16日
兼題: 二百十日 新酒
ままでやり人肌もまた今年酒
悼 郁子 二句
どんぐりのころころどこへ行つたやら
白き髪吹かれて二百十日の朝
裸子の転げて動くこと覚え
生臭さにビール一本秋遍路
信子
◎ホース引き伸ばし水撒く厄日かな
◎荒神輿足袋に昂る力こめ
○牧の牛ちらばり二百十日かな
○何時か知ら眠りに虫の終夜
晩年に晩年の日々今年酒
比呂
◎二百十日笑ひ閻魔の欠け金歯
○鉦叩鉦連打して鳴き初める
○屋敷神へ二合徳利の新走り
間引く木を寝かせてやると言ひて杣
こともなく過ぎし厄日の捨て欠伸
◎二百十日背高きものを薙いでゆく
○雨乞ひの禰宜の打ち振る金の幣
○流木に取らる釣糸秋の暮
杉玉の揺るる小さき古き蔵
初入選祝ひの新酒届きけり
昭雄
◎喝喝と厄日の軍鶏の高歩み
反骨の背筋の伸ばして酌む新酒
新酒酌む師の杯は江戸切子
スカイツリー見上げる二百十日かな
百薬の長と頑固の酌む新酒
敬子
◎コスモスの風を道連れ歩荷行く
里山の蒼き夕暮れ厄日かな
膝がしら叩き利酒極めたる
秋立つや仮設の子等のハーモニカ
峡の宿ほうほう月の角笛に
○あらかたの農事納めて厄日かな
○串焼の青とうがらしにて一献
○ひたぶるに石工鑿打つ音の秋
馬返しいよよ渡瀬や虫しぐれ
新走り手足れ石工の子持蝦蟇
良人
○草千里牛の群追ふ秋あかね
○スカイツリー二百十日の空を突く
遠い雲いつしか染まる秋の暮
小夜更けて虫の音消ゆるしじまかな
高々と雲を浮かべて天高し
健
○人肌や新酒の燗は日向とも
○泥鰌鍋食らひて二百十日かな
竹筒に香り満ちたる新酒かな
新しき袋に入れる新酒かな
狼や二百十日は少年だ
○陽に映えて旧家の軒の柿のれん
夕空に隊形を変へ渡り鳥
少しでも被害を防ぐ厄日かな
亡き父に新酒供えて墓参り
ひつそりと田圃に残る案山子かな