第198回 平成25年6月23日日
兼題: 海紅豆 水羊羹


  利孟
 みつ豆の蜜の白黒つけられず
 三線を見過ぎ世過ぎに花梯梧
 茶柱を舌に転がし水羊羹
 梅雨の底消えては点いて街路灯
 花の名を問はるも知らず梅雨深し

  比呂
☆肚の内明かさず睦び水羊羹
☆更衣甕にふつくら藍の花
△田蛙の呟くやうに鳴ける昼
△覗色に染まり夕立の後の空
△多佳子の忌赤く出でたる梅雨の月

  昭雄
☆青空を押し上げ燃ゆる海紅豆
☆海紅豆燃ゆれどノラになり切れず
△水羊羹冷めた番茶の甘きかな
△水羊羹提げて小路の江戸かしげ
 沖縄の語り部髪に花でいご

  聖子
☆制服の深き背の皺衣更へ
☆包装も紐も水色水羊羹
△衣更へ並木は更に枝広げ
△警備員休憩室の麦湯冷ゆ
 長唄の鼓程良き夏の宵

  良人
☆酒蔵の古き瓦や海紅豆
△新登場蕎麦屋メニューの水羊羹
△病床の友の冗舌水羊かん
△南国の強き陽射しや海紅豆
 水羊羹瑞々として皿に載る

  健
☆まさをなる空と海原海紅豆
△沖縄や風なく揺れる海紅豆
△縁側に弾む話や水羊羹
 手土産の水羊羹を持ち歩く
 墓参り母好物の水羊羹

  輝子
☆万緑や会津へ山を三つ越えて
 水ようかんすだれ通して鈴の音
 雨上がり川面に集ふ花しやうぶ
 山藤の木々に連なり奥只見
 万緑の風穴埋めしおおてまり

  登美子
△喉過ぎる流れの早さ水羊羹
△寝ころんで酔に任せり夏座敷
△語部のガマの話や海紅豆
△草笛の少年早やも喜の祝
 六月の軽井沢人疎らなり

  一構
△青葉闇小枝を運ぶ夫婦鳩
△入梅や農協道の駅となり
△雲の峰鼻にピアスの山ガール
 添削の一字に学ぶ麦の秋
 夏帽を阿弥陀に山を目指しけり

  史行
△職を辞せるこの地に植ゑむ海紅豆
△水羊羹わが半生のほろ苦さ
△憂鬱は降り捨てるべし海紅豆
 茶の香と連れ添ひ泳ぐ水羊羹
 蠢くと見ゆる育ちの西瓜苗

  敬子
△海紅豆揺れれば赤き蝶のごと
△蟠りとけて小皿の水ようかん
 母の日のオカリナ響く森の家
 若葉光梢葉裏を輝かす
 後継ぎも無くて十薬茂る家

  ミヨ
△砲台や雨の岬の海紅豆
△草蚊遣日ぐれの土間を煙らしぬ
 トロッコの音坑道に滴れり
 路地奥の老舗の菓子屋水羊羹
 猿猴草谷地を拓きて老二人

  鴻
△おかはりの皿に盛られて水羊羹
 大玉の他はうち捨てキャベツ畑
 歩き止めしばし眺める海紅豆
 丘一面赤が埋めたる罌粟畑
 すき腹に水羊羹の旨さかな