第197回 平成25年5月12日
兼題: 卯の花 柏餅



  利孟
糞除けの板にやすみて軒つばめ
帽の鍔うしろに回し運動会
膝抱へ坐する朝礼花つつじ
卯の花や無住の寺に人寄りて
味違へ葉表葉裏柏餅母の日の

  敬子
雲揺れる川瀬五百の鯉のぼり
三世帯となりしふるさと八重空木
飾らるる家宝の太刀や柏餅
曲折を生きたる米寿花菖蒲
栃の花歌を掌招く雨後の空

  比呂
青嵐マクベスの森動き出す
卯の花や野武士のやうな須恵の壺
焦げ癖の鍋での煮炊き三鬼の忌
太刀鎧蔵より運び柏餅
箱庭に濡れて傾ぎし酔李白

  聖子
県庁に国旗と並び鯉のぼり
鯉のぼり竿を軋ませ空かける
卯の花や隣の家は田をはさみ
人住まぬ母の生家や花空木
レジ脇に積まれパックの柏餅

  芳子
いはた帯巻く吉日や今年竹
花空木母の受け継ぐ父の杖
花散らしつづけて眠る桜かな
父となりし子の背の広さ柏餅
笑ひ声転がり伝へ菖蒲風

  ミヨ
釈迦岩や風に掃かるる松落葉
ぼうたんや座布に凹みの坐禅堂
柏餅包む唐子の小風呂敷
数多瀬を越えて源流花うつぎ
一掴みづつを括りて青菖蒲

  良人
柏餅女系の家の神棚に
卯の花の垣に終日雨の音
人の列伸びて老舗の柏餅
卯の花や野田に鳥声水の音
卯の花や谷の流れに竿をさす

  信子
卯の花や風通しやる長屋門
母の日の母の落着く割烹着
子沢山の家に育ちて柏餅
一人っ子の持て余したる柏餅
平和な世続きますやう柏餅

  昭雄
卯の花や子馬は親を離れ跳び
花空木木釘で組まる桐箪笥
柏餅鎧兜を飾り立て
酒仲間句仲間今日の柏餅
初夏の鬼怒川の流れを田に分けて

  健
旅の宿卯の花腐し夜もすがら
冷奴一つ手酌の縄暖簾
働けど楽にならざる節句かな
二つ折したる布団や柏餅
卯の花やワンピース着の白い女

  大越
母の目を盗み頂き柏餅
卯の花を揺らして登山電車かな
川辺来て今時問えば空木なり
蒸したての柏餅の葉餡を取り
祖父の手と孫乗せるかな柏餅

  鴻
紅色の空木の花に見とれけり
尺皿の呉須の唐子や柏餅
釣堀に終日遊ぶ家族連
浅瀬川子等大声で魚追ふ
柏葉の香り芳し柏餅