第202回 平成25年10月14日
兼題: 後の月 零余子飯
零余子飯砂一粒を噛み当てて
うす甘き餡の焼き餅紅葉茶屋
山の水溢れて澄める庫裡の槽
もみずれる辺りで交差ケーブルカー
だんじりの笛に蹤く鉦十三夜
信子
☆新米を握る両手を弾ませて
△陶器市民宿の夜のむかご飯
・尻取りの「ん」でお開き十三夜
・夕星や紅で仕上げの酔芙蓉
後の月駅出て渡る橋の上
昭雄
△後の月歌口湿す篠の笛
△仕舞風呂夕べに掻いた落葉くべ
△弾痕は戊辰の戦零余子飯
・竜笛は悲恋の音とや後の月
逢ひたくて手紙を出しに十三夜
△秋の水こぼし水車の杉葉搗く
△定年のなき農の日々零余子飯
無言館出でて余憤のみだれ萩
仮小屋の達磨座りのしめぢ売り
十三夜噴煙上る火口壁
敬子
△十三夜兎の尻尾少し欠け
・零余子飯峠の茶屋の品書に
・吹かれ来て吹かれて去りぬ飽きの町
残照になほ散りしきり金木犀
みちのくの旅につづるや鰯雲
比呂
・無花果の無聊の果てに嘯けり
・凶作や弊衣破帽の案山子
・子を二人生し腰豊か天高し
繩掛けて馬柵の閂草の絮
零余子飯山に祀りし海の神
・十六夜父子の並びて坐すばかり
・葬列の先行く父や通草の実
・無農薬てふ札立てて秋野菜
蒼天に音広がりて零余子摘む
くるくるとピアノ弾く指秋日和
良人
・筑波嶺を明々照らし後の月
・山峡の棚田に居着き後の月
・山の湯の宿の朝餉の零余子飯
後の月照らす松島七ヶ浜
零余子飯椀に香りのおさまらず
鴻
・柿の木や実の鈴なりに葉を散らす
・熟れ零余子触れんとすればこぼれけり
話聞き試しに作る零余子飯
畦道に美人案山子のコンクール
高原の風に波打つ夕芒
・観月や芋のありけり栗豆も
・ほろ酔ひや暈の八重なる後の月
山芋や根はトロロ飯実は零余子
皓々と川原を千里後の月
光る帯中禅寺湖の後の月
木瓜
・雲行き手静かに照れる後の月
・秋深し趣味極まらず飽きもせず
食べたことなくて話に零余子飯
小母様の香りこぼれる零余子飯
亡き友の姿霞みし後の月
巴塵
・お手水や弓手に映る後の月
・ほつこりと零余子ごはんの夕餉かな
国ぢゆうを神嘗の月照しけり
十三夜藁鉄砲に囃子唄
零余子摘む蔓の根本に印して
美人林山毛欅百幹に後の月
後の月我が手のひらの運命線
麻酔醒め妻のうはごと後の月
秋の朝大地踏みしめ退院す
薄暗き繁華街の夜後の月