第212回 平成26年9月21日
兼題: 無月 新酒
蕎麦の花野小屋の鍵の無き板戸
新酒汲む手塩に黒き五年味噌
金銀の供華の輝き麗かに
秋冷やホーム向ひに待つ列車
灯明の炎の音立てて無月かな
比呂
☆風見鶏どれも雄鶏初野分
△奉納の菰の華やぎ新走り
・葉は花を花は葉知らず彼岸花
・秋の雨衰へみせて甕の藍
・月の雨早ばや下げし供へ物
聖子
△解体のビルの残骸無月かな
・ほつれたる社旗のなびきて九月尽
・残業を終え自転車に虫時雨
・代々の議員の写真無月かな
・新酒飲むまづ一口は目を瞑り
△縄張りをして大根を蒔くところ
・祭笛吹きに帰郷と療法士
・男子女子長寿の国の今年酒
・山の日の溢れ新米出荷場
胸元の湯音無月の終ひ風呂
良人
△筑波嶺の山の端うすき無月かな
・大川の土堤に闇ある無月かな
・琴の音のこと更高き無月かな
スカイツリー無月の空に立ち忍ぶ
長崎の夜景寂々無月かな
昭雄
△献額の竜が口開く無月かな
・歩き初む嬰を祝ひ酌む新酒かな
・灯台の燈の皓々と無月かな
筑波嶺を背負ふ百戸の星月夜
星こぼれさうな男体山無月かな
・峡の宿の山菜づくし無月かな
・武蔵てふ犬が尾を振る秋日和
・朗朗と卒寿の謡敬老日
今年酒蔵を浄むる八代目
仕来りの新酒授かる三狐神
一構
・金婚のみちのくの旅新酒酌む
・貴婦人の名の白樺や草紅葉
・民宿の膳賑やかに今年酒
新酒酌む澎湃として喜寿を過ぐ
犬吠える貌は無邪気に無月かな
巴人
・広庭のほのかに青き無月かな
・酒林とくとく徳利新ばしり
・鳴る風の杉の香運ぶ無月かな
縄暖簾くぐりて新酒祭なり
月に雲白い女の酌を受く
・無月なる雲に明るきところあり
山道や右も左も紅葉して
成人を迎へる友に新酒かな
溜池に秋の金魚の日向ぼこ
悉人にはげまし奨める新酒かな
健
・居酒屋に乾杯の声新酒酌む
今宵また期待外れとなる無月
初勝利新酒で祝ふ美酒に酔ひ
樽の香の新酒の仕込み輝けり
明かりなきわが人生の無月なり
輝子
・声高に呼び込み新酒振る舞へり
香りよし五穀豊穣今年酒
鬼やんま睨みきかせて尾を伸ばす
もやもやもケセラセラなり秋の空
葉舞ひて遊ぶ子等の背野分かな
無月とは知りつつ外に出でにけり
初の香の開き渦巻く新走
しんしんと思い出浮かぶ無月かな
何事も暫し忘れて新酒つぐ
火が昇る秋刀魚の吐息突き抜けん