第213回 平成26年10月26日
兼題: 蝗 水澄む


   利孟
 木洩れ陽のゆるるを見つめ秋の駒
 ひしめいて瓶に蝗の数増える
 日の光受け銀杏の白さ増す
 川底の石に湧く雲水澄めり
 竜胆や風に硫黄の香の薄く

   昭雄
☆渾身の蹴り足胸に蝗跳ぶ
△鵙高音濡れ手で開ける厨窓
・水澄むや農婦下げ来る煤薬缶
・雁渡る声に見上げる郷の空
 新蕎麦や樋の水音天に抜け

   信子
△茹でられてまだ跳ぶ容蝗かな
・ふくらんだ蝗の袋自慢かな
・水澄むや箔新調の陽明門
・銀漢や海と陸とに生と死と
 柿の実やジョージと交はす日本語

   聖子
△天高し七つ道具を腰に鳶
・ぬかるめる田に踏み込みて蝗取り
 秋場所や勝ちて巻き取るテーピング
 蝗炒る香り懐かしいろり端
 蝗取り触るるやいなや飛び立てり

   一構
△畦道の日向日陰に蝗跳ぶ
・音きしむ窓を開ければ秋の色
 蝗跳ぶ童の口のうす笑ひ
 好奇心まだまだありぬ温め酒
 新米や産地日付を見比べて

   良人
△風音に追はれ飛び立ついなごかな
 水澄むや男体山の薙定金なり
 そよと吹く風の調べや水澄めり
 川渡る風の和みて水澄めり
 水澄むや瀬音風音沢を往く

   ミヨ
・水澄むや池塘に茶臼岳の影
・芒綿飛んで風住む牧舎かな
・入山の三つの掟鹿の声
・落鮎や墨絵ぼかしの雨模様
 祈るかに目瞑り吹く祭笛

   健
・追へば逃げ追はねば隠る蝗かな
・腰に提げた袋ふくらむ蝗取り
・居酒屋の手塩に蝗五六匹
 水澄むや若者たちの胸はずむ
 水澄めりつぶらな瞳輝けり

   芳子
・終電の駅舎の灯はださむし
・やうやくにパズルが解けて冬はじめ
・ゆたかなる陽の香あふるる稲架襖
 水澄むや城下の街並みはるかなり
 赤銅の月とノーベル賞の秋

   木瓜
・目の高さまでがせいぜい蝗跳ぶ
・水澄みて大魚の深き息づかひ
 水澄むや我を純へと誘へり
 蝗撫ず早半世紀前のこと
 人の道それはいろいろ秋の暮

   輝子
・秋の夜の皆既月食父の顔
・水澄むや水車に音立て杉葉搗く
 繰り返す濁流なれど水音澄めり
 網の中羽鳴く蝗顔を蹴り
 遠くから母の炒りたる蝗でせう

   巴人
・水澄むや色を散らして泳ぐ鯉のぼり
・道ばたに蝗連なる穂の戦ぐ
 水澄むや鋭く睨む?の目
 水澄みて流れる雲のゆくばかり
 畦道や花火のやうに跳ぶ蝗

   比呂
・白木槿嘶きしるき馬車溜り
・蝗取り繋がる犬の吠え続け
 紙一重の運の良し悪し曼珠沙華
 本尊は片手観音郁子熟るる
 水澄むや誰が見してふ湖の主

   敬子
・六地蔵祀らる峠柿熟るる
 水澄むや金紙で折る小さき鶴
 曇天にどこに居るのか蝗取り
 秋の虹仰ぐ長縁武家の里
 少年のリュックの列や鰯雲