第221回 平成27年6月21日
兼題 薄暑 網戸
街騒を近くに風の網戸かな
風に羽根ひろげ温もり岩根の鵜
夕薄暑立ち呑み酒場の外に椅子
紫陽花や鎌倉古道は川越えて
喫泉を取り合ふ鳩や薄暑光
信子
☆暮れ残る仏舎利塔の丘薄暑
△石段へ鳴らす靴音薄暑かな
△通り雨過ぎて風呼ぶ網戸かな
・湯上がりの網戸に見やる宵の月
・庭先へ寝かせ張り替へ網戸かな
ミヨ
☆泡盛や阿檀の風を受けながら
△竹皮の握り飯買ふ駅薄暑
・開けることなくて納戸の網戸かな
・春蝉や疊重ねる作業小屋
・水草にふれ琉金の転覆す
△隠沼の小舟の灯る夕薄暑
・青網戸二合半徳利の酒を酌み
・主出て来らし薔薇を見てをれば
お社の太き鈴の緒薄暑かな
夕薄暑日波に紛る浮御堂
△轆轤蹴る足休み無く柿の花
比呂
・郭公の湖から沼へこだまして
・隣り家の者煮る匂い夕薄暑
・猫去にてもてあます膝花ざくろ
狂ひ飛ぶ虫のぶつかる網戸かな
木瓜
△荒波と五月雨磯の岩叩く
・一筋の煙すり抜け青網戸
ビルの街所定めず薄暑光
待ち焦がれ外の暗闇吸ふ網戸
腕かざし汗噴き出づる薄暑かな
・父の日の父の袴の躾糸
・長生きのこつをあれこれ新茶汲む
薄暑光受けてはじめる庭仕事
網戸ごし仰ぎて恋ふや夜の星
ままごとの椀に山盛り濃紫陽花
良人
・下校児の頬の赤らむ薄暑かな
・日の入りて山の端潤む夕薄暑
並木路に歩む人増す薄暑かな
網戸越し遠き落日ながめ居り
風の間に風を求めて網戸開く
聖子
・水出しの珈琲落ちる薄暑かな
・菜を刻む夕日入り来る網戸かな
冷奴崩しぬ怪我のまだ癒えず
湯上がりのほてり灯を消す網戸かな
風に鳴る網戸に午睡覚めにけり
・住み古りし庭の緑の薄暑かな
・読書かな網戸の淡き陽を入れて
外出に着る物迷ふ薄暑かな
草むしるふりして覗く網戸越し
旅に出て身にも心も薄暑かな
輝子
・網戸より夕餉の家のさんざめき
鳥の声薄暑樹の元誘ひけり
モザイクの景色の身揺る網戸ごし
街薄暑赤信号を避けて行き
薄暑光蔵の茶房のししおどし
巴人
・青網戸十字の花のいや白く
階や除草奉仕の薄暑かな
竹林や手にも顔にも薬降る
霽れ庭に蔓伸びきほふ薄暑かな
代々神楽の舞人光る薄暑かな
一服の林の中の薄暑かな
網戸から涼風吹き込む新築家
ひねもすを漁網の修理に熱中す
川干し川底あちこち魚踊る
麦飯を久方ぶりに味はひぬ