第227回 平成27年12月26日
兼題: 初氷 笹鳴き


  利孟
 血の色の会津の器葛湯食ぶ
 冬枯野遊び仲間をさがし風
 爪先で窪ます田の面初氷
 若松を束ねて揺らし杣の背ナ
 笹鳴きやひねもす小屋に籠る犬

  昭雄
☆狛犬の耳のそばだつ笹子かな
・笹鳴きにまた止まりけり写経の手
・名刹の柄杓の英字初氷
・陽に翳しては声上る初氷
 初氷こけしの首をまはすおと

  敬子
☆板塀を音なく猫の行く小春
・歌声の夢現なりクリスマス
 竹林の遠近ひかる初氷
 笹鳴きや手作り花瓶仕上げつつ
 横笛の未来の祈り石蕗の花

  信子
△笹鳴きや光拡げて休耕地
・残業を終へし靴音初氷
・どんど火の追うて追はれて猛りけり
 晩酌をせぬ餉に慣れて初氷
 笹鳴や昏れ染む山の美術館

  晴子
△初氷湯気上り立つ露天風呂
・初氷水漬く枝葉を閉ぢ込めて
・朝まだき新明様の初氷
 いざ行かむけふの着膨れ初氷
 木の葉擦れ聞けば笹鳥影ひとつ

  ミヨ
・日差しすぐ消え
・粗壁の大根しはしは八溝郷
・間伐の杉横たはる冬の月
・初氷不動の鯉の髭ぢから
 胸に住む人恋ふ虫や冬薔薇

  比呂
・冷ましては母の口へと冬至粥
・返り花五年日記の古栞
・花八手山の水引く外厠
 薬湯の染みし木桶や笹子鳴く
 寝ねかてに聞こゆ靴音夜寒かな

  良人
・笹鳴の途切れず越える沢谷地田
・小坊主の高き下駄音初氷
・水音の消えし鯉沼初氷
 笹鳴や風間の藪に揺ぎなし
 笹鳴やはしゃぐ子の声甲高し

  健
・時計代はりかな
 水溜まり光まぶしき初氷
 薄氷を踏む冷や汗の初氷
 通り道屋敷の音色笹鳴かな
 笹鳴の静かな調べ奏でたり

  鴻
・寒竹を伐るよりはじめ編む小笊
 山道の木の葉踏みつけゆけるかな
 寒椿仏壇飾り一人占め
 寒菊や仏だん飾りにぎやかに
 冬枯れて野辺の草木裸なり

  巴人
・手水舎の柄杓くはへて初氷
 参籠やかはたれの杜笹鳴けり
 垣根ごしピラピラ尾羽の笹鳴けり
 泥濘に長靴うはしやぐ初氷
 笹鳴くや立木も知らぬ宮の杜

  木瓜
 拙守り波に揺られて漱石忌
 年越のパイプ分厚く太きもの
 ちりばむる藪の笹鳴朝日射す
 年惜しむ眼鏡外して遡り
 コンダクター下す一振り初氷