第228回 平成28年1月24日
兼題: 初東風 人参


  利孟
 深雪晴舟曳水夫の力瘤
 バター泡立ちて人参は飾り切り
 初東風や駅より家へ小半刻
 スキーヤー転倒異国の叫び上げ
 大寒の筑波山は風の倚るところ

  木瓜
★書初や使ひなじみし筆で「夢」
○裸木となるや雑念捨てきれず
 人参や歯応へ硬く詠み難し
 初東風や隠れ忘るを叩き出し
 人参の程好き背丈然りげ無し

  ミヨ
★初空へ大の字となり野州鳶
・コーヒーミル挽き出す香り冬深し
・星の降る夜毎育てて氷池
 初東風のからむ螺髪や阿弥陀仏
 人参の赤黄チップス旅の膝

  比呂
○睨み合ふ目無しと片目達磨市
・大寒の滝行錫杖もて囃す
・冬夕焼終の棲家は二間にて
 金色夜叉は未完に終り寒の月
 初東風やつんのめるやう歩き初め

  昭雄
○初東風に袖ひるがへる巫女の舞
 日と星の覗く人参畑かな
 人参や仔馬は親を離れ跳び
 寒の通夜釦を嫌ふ釦穴
 初東風や雨情旧居の自在鉤

  敬子
・薄ら日の垣に寄り添ひ初雀
・初東風やアルパカ鼻をうごめかせ
 まろやかな人参入りのなますかな
 七歳の威儀を正して弓始
 花八つ手歩行訓練茜さす

  良人
・初東風や鬼怒川のかなたに富士光る
・初東風や社殿に急ぐ巫女に吹く
 初東風や手に取るばかり筑波山
 初東風のゆらす菓子屋の幟旗
 古稀過ぎて人参の味なほ嫌ふ

  信子
・冬晴や研ぎ屋車で店開き
・花弁に切つて人参炊き合せ
 地のものをそろへ七草買ひにけり
 初東風や過疎地の原のうねりをり
 風呂の湯を揉めば湯の香や雪催ひ

  輝子
・東風の海飛沫かぶりて鳴く鴎
・野菜棚隅が人参置かる場所
 青き空満たし臘梅咲きにけり
 光る池朽ち枝黒き番鴨
 花型の人参散らし馳走かな

  鴻
・鉢植えのみかんにひとつ実の付いて
・麦踏みの昔は足で踏む話
 寒菊や花壇の中に一人咲く
 初東風に心清めて作句かな
 人参や妻の料理に舌つづみ

  健
・具だくさんの汁の紅色京人参
 一葉の初東風吹くや舞ひ落ちる
 初東風の和服の髪をなでにけり
 初東風の太宰府からか吹きにけり
 人参の掘り出し鎚の落ちにけり