第230回 平成28年3月13日
兼題 朧月 彼岸


  利孟
 建前の棟木の弓矢朧月
 飛び石を濡らして消えて春の雪
 春雨や話無用の友もがな
 春浅しボタンで開ける列車ドア
 彼岸会の法話手短かにて合掌

  信子
☆猫車押し行く畦の春日かな
・着膨れを手繰り上げ持ち聴診器
・朧夜や太郎の爆ぜる「夢」一字
・洗顔の泡を両手に朧かな
 お彼岸や家計簿、日記不精して

  ミヨ
☆啓蟄やくずれ菰焼く古墳守
・梅見頃ときに女子会車座に
・茶寮はや篝火落し月おぼろ
 彼岸詣?に商ふ芋串屋
 春火鉢拵ふ僧や勤業す

  昭雄
△月朧鳴らし拭き上げ通夜の椀
△牛小屋に鎖の音や朧月
・月朧夢二の女の柳腰
・廃坑に殉難の墓碑涅槃西
・使ひ瘠せしたる麺棒涅槃西

  比呂
△山笑ふごはごは乾く柔道着い
△水の無き星へ探査機朧月
・雑魚売りの庫裡に来てゐる彼岸寺
 無きほどの児の力瘤梅の花
 山裾に雪解の水の乱舞かな

  良人
・おぼろ月寄り添う星の光削ぐ
・洗面の水に温みの彼岸かな
・里山に風の和らぐ入り彼岸
・鐘の音の乾きて過ぎる入彼岸
・日を返し輝く墓石入り彼岸まで

  一構
・日光の水の暗さよ彼岸かな
・那須暮るるホームの端に朧月
 どの窓もカーテン閉ざす彼岸かな
 木道を漢がふたり朧月
 祭り終へ街の夜更けの朧月

  木瓜
・原発を囲へる塀や蛇出づる
・人生の味深き皺朧月
 忙し世にふひとひと息彼岸寄す
 重軽き春の会津の彼岸獅子
 朧月果たせぬこの世夢おぼろ

  敬子
・竹林に鳥語のこぼれ春近し
 朧夜の古城を仰ぐ旅の夫
 雪予報逸れし学童腕相撲
 故郷の地蔵に団子入り彼岸
 花菜畑おしやべり続く杖の人

  健
 五年はや立入り解除の彼岸寺
 煩悩や此岸を離れ彼岸かな
 目をこすり見直したるや朧月
 震災地朧月夜に浮かびけり
 弔辞読む人生語る彼岸かな

  鴻
 朋輩の自作句集の届き春
 コンピューター名人破り碁石打ち
 何となく歩いてみたい朧月
 老妻と小川のほとり彼岸花
 カリフラワー種類いろいろ食べ方も

  輝子
 おぼろ月おつかれさんと言ひさうな
 神田街若き日誘ふ名古屋市
 恥じらひてはらりと溶ける春の雪
 彼岸かな光の中の雨後の墓
 夕暮れの雑踏の間に梅香る