第241回 平成29年2月19日
兼題 梅 豆撒き


 瀧凍てゝ水にねむりの刻もどる 重次







  利孟  
 横綱の破顔福呼ぶ豆を撒く  
 語り得ぬ話墓まで梅こぼる  
 クロッカスやや不揃ひの起立礼  
 ワイパーに抗ひ溜り春の雪  
 灯に透かし拭き上ぐグラス名残雪  

  一構  
★還暦の赤きベストや福は内  
★香は四方に刑務所跡の梅の花  
・晩酌にとりわけ福の豆を打つ  
・福は内受験を終へし中学生  
 声あげるまでの躊躇ひ福は内  

  敬子  
★園庭に声甲高く鬼やらふ  
・梅が香や家伝の観音像の軸  
・筆跡に亡夫の面影梅の花  
 コーヒーの香り米寿の小正月  
 冬紅葉長寿の語尾のやはらかに  

  青樹  
★緋襷の女優勇みて鬼やらひ  
・梅の香や田舎蕎麦屋の列に付く  
・夜の静寂梅の香りの荒屋敷  
 梅の香に誘はれ思ひ出の旅へ  
 母の絵に梅まる貰ひし日の遙か  

  信子  
・子の快気祈るや雪の男体山へ  
・豆撒きのそこここ端折り鬼は外  
・喉元に含む麻酔や桜冷え  
・犬の菜のももやさくらや梅日和  
 梅見月透析室の窓明かり  

  美恵子  
・梅一枝床の間に活け茶の支度  
・神垣や苔生ふ枝の梅の花  
・福寿草豆炒る母の丸き背  
・豆を撒く息子の背中父に似て  
 梅の花米寿の母の薄き紅  

  良人  
・野仏に風が散華の梅の花  
・村里に届きし朝日梅開く  
・青空に浮かぶ白雲梅光る  
 野に続く梅林里を香につつむ  
 川岸を埋める白梅瀬音消す  

  昭雄  
・梅真白焚かずの窯の火伏札  
・風強きふるさとの山梅咲けり  
・裂帛の気合闇撃つ鬼やらひ  
 梅真白湖畔の宿で書く手紙  
 窯守の陶師の妻か胸に梅  

  比呂  
・堆黄の香盒に龍春満月  
 海へ打つ鱗張り付く升の豆  
 風抜ける原爆ドーム寒紅梅  
 山伏の祓ひて鬼をやらふ豆  
 風音の強張り続き冴返る  

  ミヨ
・冬木の芽虚空に散りて星と化す
 熱燗や頬に紅さす志功の絵
 節分や島へ繋がる海の径
 豆撒くや齢の悩み一打ちに
 梅東風やおもむろに開く好文亭

  木瓜
・鬼やらひ天にぎらりと星燃ゆる
 寒明けや塵捨てに行く妻の背
 春めくや六十五点の幸の前
 恋猫の天を突く声夜のしじま
 ひたすらに道はひとすじ梅真白