第244回 平成29年5月14日
兼題 単衣 石楠花


  利孟  
 若葉して木暗き宮の栃並木  
 単衣出す虫除けの香を風に抜き  
 風抜けて白大島の長羽織  
 石楠花の花追ひ辿り天下の嶮  
 石楠花や肉抜きカレーの小屋の昼  

  敬子  
☆大空の光をつれて夏燕  
△鯉のぼり女船頭身を揺りて  
・若葉風勝手口より孫と猫  
 礼状の文字すらすらと睡蓮に  
 被災地の復興パンジー千の鉢  

  昭雄  
△単衣着て少女の歯切れよき返事  
△単衣裁つ尺に昭和の日付かな  
・石楠花やお堂に並ぶ六地蔵  
・紫の単衣築百年のにじり口  
 石楠花や句碑に苔むす雲巌寺  

  比呂  
△菜の花や左千夫の墓へ川渡り  
・白地着し子の声祖父の声に似て  
・貸しビデオの三泊四日走り梅雨  
・石楠花や雨後の女滝の細く落ち  
 尺**の何を尺取る半夏生  

  信子  
△石楠花や二峰雲間の筑波山  
・水さやぐ入日明かりの植田かな  
・をちこちの声菜園に豆の花  
・沖縄は梅雨入る気配昼の雨  
 単衣着て帰り路急ぐ雨上り  

  ミヨ  
△石楠花や日月窓の石燈籠  
・梅雨近し傾ぐ稲荷の楔打ち  
・代掻くや噴煙なびく茶臼岳  
 お水屋に杓を戻して単衣の手  
 筍の伸びきる空や藪奏づ  

  聖子  
△単衣着て下駄音高く京の街  
・外股に歩き手提げを振り単衣  
 栃の花窓清掃の清掃の命綱  
 石楠花や山並み遠く空青く  
 ハーモニカ土手のたんぽぽ綿毛ふく  

  木瓜  
・黄昏の玉蜀黍の花揺れる  
・衣擦れの音の乾いて単衣かな  
・石楠花の葉擦れの音の軽きかな  
 練りに練り器晩成夏燃ゆる  
 核持ちて核を持つなと言ふ溽暑  

  健  
・巾着を振りて軽やか単衣かな  
・風を飲み空にはばたく鯉幟  
 石楠花の紅の桃色桜色  
 五月雨や川面の緑濃く染めて  
 石楠花の雫こぼれし一葉かな  

  良人
・単衣着て上る石段風わたる
 僧の着る単衣のかへす日の光
 石楠花の群落続く白根山
 ひそやかに石楠花咲けりビルの影
 単衣着て杖手に辿る町表

  美恵子
・芍薬の雨きらきらと蓄へて
 躙口単衣の裾の音もなく
 芍薬や帯締め直し村芝居
 梅雨近し母の単衣を染め直し
 柿若葉髪かき上げて飲むコーヒー

  青樹
・外来の石楠花赤く燃ゆる色
 祖母と母着たる萌黄の単衣かな
 山肌を埋め石楠花の花咲けり
 嫁ぐ子へ母は夜なべの単衣縫ふ
単衣着て吾を待ち居る人愛し

  澄水
 浴衣縫ふ母は背中を丸くして
 駅までの坂石楠花の花咲けり
 風鈴が揺れエアコンを止めてみる
 遠きかな単衣の下の白き肌
 石楠花の側駆け抜ける雨が追ふ