第245回 平成28年6月18日
兼題 梅雨 梅干し
五月闇の宙より鐘の聖母堂
梅雨晴間上下に窓の開く客車
後始末の主待つ犬夾竹桃
花南天散りては蟻の道塞ぐ
梅漬けて梅の香の湧く梅の水
昭雄
☆梅雨深し城の心礎の人柱
・その奥の鎧兜や梅雨館
青嵐天空の琴掻き鳴らし
操車場鉄鎖の匂ふ梅雨晴間
梅香る指打つメール走りけり
比呂
△ステンドグラスに若きイエスや花石榴
△見えぬ香を放ちて高し朴の花
・ビニールの置き傘を借り走り梅雨
釣書の麗句しかじか苔の花
松蝉や坂下りて付く寂れ宿
△梅雨茸一夜に列をなし育つ
・菖蒲田や名も無き橋を渡りつぎ
・花ユッカ咲いて波音迫りけり
・嫁入り舟南風に押さるる利根河口
古蔵の普請粗方梅を干す
信子
△青梅雨や海を四方に美し国
・長屋門代代続く梅夜干し
・ビル街の働く灯り走り梅雨
神領の梅雨寒の舌垂らしをり
確と嬰咥へてパンダ梅雨の星
美恵子
△父の日や我にかたみの萬年筆
・梅漬ける嬉し香りも漬け込みて
・女梅雨ショパンの符打つごと続く
木下闇背に手をやりて見送りて
撮り貯めた写真に添え書き梅雨篭
△梅干しの赤にゆがみのお弁当
ドラム缶は分からない
鼻の上居座るメガネ梅雨長し
独り食む冷やし中華や冷え立ちぬ
片かげりほつとひと息冷茶注ぐ
澄水
・老いた手が干し梅返し続けたり
外灯の下紫陽花も重くたれ
戸を開けて梅干す縁に風を入れ
川風に揺れる青梅たわわなる
校庭の蕾脹らむ梅雨葵
聖子
☆梅雨晴間傘振り回し下校の子
・何処より出でたる小虫梅雨晴間
・旨みます予感夜干しのござの梅
母自慢の秘伝梅干し分け貰ふ
梅雨晴れの酸味程よきドレッシング
・竹皮にくるみて梅干しにぎりかな
・梅雨入りの傘たたく音絶え間なく
・やうやくに雨の上がり手蛍狩り
紫陽花や雨の坂道七変化
梅もみの笑顔はじける家族かな
良人
△梅を干す黒光りする広縁に
・街路樹の上枝いや伸びもどり梅雨
・走り梅雨花に埋まり手鬼怒川の土提
梅を干す農家の庭を香の包む
田の草の勢ひ増せり走り梅雨
敬子
△道問はれ杖で書く地図小判草
・麦秋や大平山のゆるき裾
もてなしに添へ梅干しのにぎり飯
リハビリや杖と目深の夏帽子
亡き夫に肩たたかれて昼寝覚
・念入りに研いだ包丁トマト切る
・立山や日照雨に白き虹生まれて
額の花己が邪念と向き合ひし
早朝に歩く初老の夏衣
雹見舞一歩重たくなってきし
青樹
・工事灯の点滅眩し梅雨の闇
・梅干して日陰は主婦の社交場
梅を干す日照雨と媼叫びけり
梅干しや種を奥歯で割りしころ
寝て起きてまた寝て起きて梅雨となり