第248回 平成29年9月14日
兼題 新米 月

   利孟
 荒海や初雁の音の切れぎれに
 黒板に金砂郷産走り蕎麦
 月出づや屋根ばかりなる魚糶場
 Jアラート響く夜を籠め野分来る
 細やかな糠の湿りの今年米

   敬子
☆刃物屋の銀の看板秋湿り
☆恣生きて卒寿や月高し
○日天の菩薩の像や月明り
○身をほぐす朝の体操草雲雀
 子燕のあどけなき声峡の里

   信子
☆重き扉を全開新米出荷場
○堰越えてよりの水音月の川
○月代や婦人講座の映写会
 月代や梅沢富美男の女形
 白白と月の灯台明けにけり

   昭雄
☆新米や蔵より出して朱塗膳
○夕厨新米の香のあふれをり
○野点傘皆月の出を待つ茶会
 孫からの新米美味と電話来る
 新米や愛想歩きの二歩三歩

   青樹
☆山の湯に月も智恵子の空もあり
 月満つるメダル目ざしてアスリート
 月満つる如く技練るアスリート
 今年米農家泣かせた空不順
 山間の秘湯の月や智恵子の碑

   聖子
○煌々と月光満ちし露天風呂
○水口に詰まりし藁や水落とす
○店頭に金の札付け今年米
○水溜りに映りし月のさんざめく
 稲刈りの時をはかりて空を見る

   ミヨ
○田の神へ供へる升の今年米
○女人堂の日のあるところ初紅葉
 月明りぼうぢぼってい打ち鳴らし
 彼岸花武蔵野深き巾着田
 椎茸の地震に崩れし榾木より

   木瓜
○月のぼり芒そよめく大和かな
○別れ蚊の血を吸ひ平手打ちを待つ
 新米の薄青き肌青味発つ
 雲流れ秋ゆるやかに歩みくる
 吟じ終へそろりと閉ぢる秋扇

   巴人
○月草の瑠璃刈り寄せて鎌の先
○月あげて杉の香の満つ宮の杜
 はつけよいに小さき手振りて泣相撲
 藁塚や遊行柳の田の面に
 さ莚や新米検すたなごころ

   健
○月天心雲の流れてゆけるかな
○新米のおにぎり母のお弁当
 星月夜山容映るシルエット
 新米の光沢まぶし炊き立てよ
 盃を友と重ねし月夜かな

   良人
○魚沼産新米に列道の駅
 山寺の大屋根反す月明り
 炊き方の添へ書付きの新米便
 天耕の棚田を照らす月高し
 炊き立ての光る新米仏前へ

   一構
○昨夜の雨未だ降りやまず曼珠沙華
 うれしさも子供のくれた秋なすび
 人影のほのぼの明き月の畔
 今年酒ガラスの猪口の金の縁
 彼岸花むなしく揺れて老いにける

   比呂
 字あまりも字足らずもあり虫の声
 米の銘柄で遊んだわけね
 数へ年で示す享年月明り
 秋風や後ずさりして画く砂紋
 月白や知足の家となり我が家