第249回 平成29年10月29日
兼題: 時雨 栗飯



  利孟  
 高みよりもぎ蟻ん子のたかる柿  
 バス停のがたつく木椅子時雨けり  
 折紙の兎耳立て十三夜  
 タヒというネットの隠語鉦叩き  
 蒸籠の湯気に渋の香栗おこわ  

  比呂  
☆秋祭大鍋で煮るお振る舞ひ  
・遠砧結ぶが手間の固き帯  
・時雨るるや風に淀みし帆引船  
・銀漢の掉尾に触るる山の宿  
・南向き笑ふ初物栗ごはん  

  ミヨ  
☆字の名に日裏日表大根畑  
・花梨の実日はとろとろと湖照らす  
・緬羊のひとかたまりに初しぐれ  
 どぶろくや合掌造りの茅の屋根  
 栗釜飯こぼるる香り麓宿  

  敬子  
△箱膳に書かれし吾が名栗御飯  
・秋薔薇異国の友の手紙着く  
・白寿まで指折り数へ敬老日  
 風韻の山峡辿る野紺菊  
 鷹揚な父の記憶や麦とろろ  

  信子  
△紅葉山前にテラスのAランチ  
・月涼し高層ビルの暮しの灯  
・豆あやしあやし炒る香や夕しぐれ  
 教室に歓声栗飯運ばれて  
 三日月や外湯に御座す獏の神  

  昭雄  
△しぐるるや窯場は薪を積み上げて  
・時雨るるや赤の切子に朱き酒  
・夕時雨下駄のをんなの小走りに  
 今もなほ戦後の記憶栗ご飯  
 長生きも嬉しき誤算栗強飯  

  青樹  
△駄菓子屋に子らの賑はひ時雨来る  
・栗飯を炊いて鼻歌里の秋  
 栗飯に思ひふたたびなる戦後  
 焼き栗の爆ぜて炉端の笑ひ声  
 母の忌の墓参の肩に秋時雨  

  良人  
・栗おこわ膳に小布施の老舗宿  
・時雨来てにわかに風の野をかける  
 校庭に遊ぶ子供ら時雨けり  
 神木にまきつき揺れて烏瓜  
 目に留まる時雨の色のやつでの葉  

  巴人  
・しぶり皮爪に詰まりて栗の飯  
・神苑の楠の根浄め時雨けり  
 ざはめいて時雨に追はる渡御の列  
 風吹けば栗落ちる音沓の音  
 しぐるるや知知夫嶺渡し降り濡ち  

  健
・高原に色なき風の通りけり
 草むらに途切れずあふれ虫時雨
 天高しグルメ三昧太鼓腹
 笑み栗の炊き込みご飯香り満つ
 夕時雨下校の子らの列乱れ

  木瓜
 栗御飯じいじの顔の艶良くて
 枯色に染まりのんびりゆつたりと
 時雨受く和気あいあいと家五軒
 さらさらと本質露呈民凍つる
 秋深し隣にひょいと声をかけ

  美恵子
 ハローウィン街に溢れる魔女お化け
 運動会家族桟敷の栗ごはん
 栗飯や祖母の手縫ひのチヨッキ着て
 栗飯を上げ神棚の天鏡
 降るほどに色を落として時雨かな