第252回 平成30年1月28日
兼題: 「初」 嫁が君



  利孟  
 トラックのはづめばこぼれ幌の雪  
 天井の裏も盛んに嫁が君  
 半生の手艶の茶筒福沸し  
 乱れ無く髪を梳き上げお初釜  
 餅三つで足りる二人の雑煮かな  

  比呂  
☆猪狩りや言葉少なき杣仲間  
*篝火の届かぬ真闇除夜詣  
*平家村雪に埋もるる由緒札  
 生くる枷の一つや二つ嫁が君  
 初御空蒼海のごと晴れ渡る  

  敬子  
☆狐棲む民話の里の仏の座  
*ポケットに句帳ひとつや小正月  
*金星の明るき宵や初湯殿  
 遥けくも昭和を生きて嫁が君  
 水仙や医師の笑顔に我も笑む  

  聖子  
☆剥き出しの梁の黒艶嫁が君  
*久々の母と語らふ初湯かな  
 一斉に天井走る嫁が君  
 雪の朝足跡辿りつつ進む  
 行き先を迷ふごと降り春の雪  

  ミヨ  
△茶釜の火絶やさぬ古刹去年今年  
△横たはる筑波山も加波山も初茜  
*羽織紐解き真打ちの初笑ひ  
*古ピアノ不意に音立て嫁が君  
*青木の実朱をもて飾る神の杜  

  信子  
△もの溢る世の何漁り嫁が君  
*目薬をまづ一注しし初化粧  
*透析へ向ふ門開け二日はや  
*初明り出窓に淡き花の鉢  
 珈琲の香や初売りの地階より  

  美恵子  
△七草粥ひと匙毎の野の香り  
*初雪や街の国道静かなり  
*昼休みつららに雫落ち出して  
 ストーブに寄り付きまつ毛凍る人  
 初詣五列で並び階上がる  

  良人  
*柏手に願ひの込もる初詣  
*寂として日光連山初日受く  
*背を押され昇る石段初詣  
*平かな八溝山を越えて初日差す  
 新居には宿る場所なし嫁が君  

  昭雄  
*大皿を小鉢の囲み新年会  
*三宝の陰より覗き嫁が君  
*子供達寝つきて嫁が君静か  
 嫁が君きりりと見せる氏素性  
 初句会背筋の伸びる奥座敷  

  木瓜
*初場所やジョージア力士の髯と髷
*身不知に扉開ける初句会
 嫁が君いただく餅に歯をたてて
 煮凝りに塗り箸使ふ指さばき
 大寒や背骨の接手はめ治す

  巴人
*ぬばたまの土間を窺ひ嫁が君
*初市のシャンシャン手〆缶焚火
 てのひらのくれなゐ初詣の息
 雲高く初東雲やビル増えて
 幣祓ひ神に抱れて初明り

  青樹
*御利益を願ふ柏手初明かり
*猫の餌を盗み食ひして嫁が君
 福だるま抱へて初市より帰る
 初売りの店内に聞く早春譜
 去年より大きな達磨買ひて春

  清泉
*新調の絵羽の紋付お初釜
 初糶の少なくなりし初荷札
 御仏を未だ見ずして初日の出
 することもなくごろごろと嫁が君