第273回 令和元年10月27日
兼題: 葦刈り 紅葉

利孟
 水漬きたる原に向かひて芦刈女
 髪の無き頭に帽子案山子
 貧ゆゑの棚田の今や崩れ秋
 車止め脇に入り口紅葉谷
 人来れば驚くそぶり稲雀

比呂
☆岩なぞる音無き女滝秋の蝶
△枝先に光り小魚の鵙の贄
・到来の茸に山の土匂ふ
・高鳴きの鵙の来てをり解斎殿
 湖に映る尖塔紅葉冷え

ミヨ
△萱刈るや村に崩れし煉瓦窯
△勤行の声のこもれる堂の冷ゆ
△いろは坂紅葉かつ散る女人堂
・獣道たどれば消えて草紅葉
・戸隠や新蕎麦ぼつち盛りにして

良人
△葦刈りの人影遠く遊水池
△深き谷奥のランプの紅葉宿
・単線の駅よりしばし紅葉寺
・猊鼻渓船頭唄う観楓船
・芦を刈る鎌音運ぶ原の風

信子
△秋天のビル清掃の命綱
△秋天や回転木馬の子の跳ねて
・山積みの葦に昼餉の葦刈女
・迫り出して沼の紅葉の水鏡
・葦苅の音へ疎水の水の音

英郷
△葦刈りの積み上ぐ束に風騒ぐ
・芦刈の空の拡がる日本晴れ
・野分後ポプラ並木の整然と
 登りつつ見上げる先にあら紅葉
 昨日今日隣の柿は伐られけり

雅枝
△掃き寄せて掃き寄せ落ち葉無尽蔵
・夫の目の細むいなごの甘辛煮
 枯れ芦の河原に過ぎし子等の声
 熟柿下のバクダン避けて駐車せり
 鬼皮を剥きて今宵の栗ごはん

昭雄
・芦刈の大鎌担ぎ舟を出し
・深呼吸しつつみあげる柿紅葉
・緋袴の巫女ひたすらに落葉炊く
・陸奥の地蔵の御手の熟し柿
 ななかまど振り向けば湖きららなす

木瓜
・色変へぬ松や陛下の式衣装
・少年の頬膨らませ山葡萄
・しんみりと会津諸白秋深し
 血管の映えててのひら夕紅葉
 蘆刈のいまや天然記念物

美恵子
・散る紅葉のせて零して野点傘
・紅葉狩り一葉ごとの色有りて
 秋澄める一の曇りなき高御座
 仰ぎ見る紅葉落ちてもなお紅き
 光差し紅葉回廊錦かな

敬子
 秋海棠乳児の様なおちよぼ口
 秋暑し長寿平安屋形船
 リハビリに励む一歩や秋の蝉
 あれ思ひこれを思ひて萩の群
 あらし去り世界に鳴らせ天の鐘