第285回 令和2年10月11日
兼題: 秋灯 雁渡る
寝化粧の薄く引く眉雁渡る
陽の欠片香りの粒の金木犀
限界集落の三戸の秋灯し
雨漏りの萩のぐい呑み温め酒
椿の実熟るや莟の味寝刻
比呂
○綿吹くや真岡木綿の地機織り
○子規に賢治に聡き妹雁のこゑ
△秋灯まどゐの部屋の深き影
△雁渡し灰に挿し立て魚の串
△残照の沖の遠波鳥渡る
良人
○颪吹く鬼怒の長堤雁渡る
△雲低き空に棹さし雁渡る
△秋灯し遠き里わにまたたきて
△音も無き風にゆらぎて秋燈
△畦に吹く野風を起こし雁渡る
○盾をもつ美男の埴輪秋灯し
△解けし藁束ね直して雁渡る
△城山の曲輪を埋め彼岸花
△通院の丸き母の背雁渡る
△蕎麦の香に父の笑顔や雁渡る
ミヨ
○藤蔓の空つなぎ止め雁渡し
△秋灯し夜店ちらほらご門前
△首塚の土盛り上がり神無月
△がちやがちやの煽ぎたてたる晩げの灯
秋耕や漁る鴉の横つとび
昭雄
○雁渡る智恵子の空を高くして
△テレワークの画面の反射秋灯し
△目を細め吹く横笛や秋灯下
△雁渡る筑波山男体山指呼の間に
雁帰るかへらぬ鳥は浮き寝して
○立ち待つや甍の端の赤き月
△さわさわと響く羽音や雁の鉤
△夕まぐれ沢の向かふの秋灯し
△寺の鐘響きて秋の灯をともす
夕暮れや颱風余波に冷ゆる足
木瓜
△蟷螂の斧振りたてて見栄を切り
△二つ三つ八つ九つと秋灯
△蒼天に身を翻し雁落ちる
長き夜や昼間は何をしてきたか
秋鯖や言いたきことを飲み込みて
信子
△僧正のつまぐる数珠や秋灯
△青北風や夕暮れ色に八溝嶺
△魚影追ひ舵切る船や雁渡し
△秋灯下仕分け大凡要らぬもの
△推敲の辞書を繰りては秋灯下