第287回 令和2年12月20日
兼題: 狐火 枯れ葎
熊を追ふ犬振り返りまた急ぎ
おんぼりと会津の椀の葛湯かな
枯れ葎ふたつに分けてけもの径
霜柱重ねた空の植木鉢
狐火や絶えてうたはぬ子守唄
信子
☆狐火や星の神話に人けもの
○壁叩き探り打つ釘十二月
・ひた走り手渡すバトン白い息
・風花や子の掌の受けるハンドジェル
・黒き鳥発つや中洲の枯葎
美恵子
○赤べこの張り子の里や枯れ葎
○風に跳ね踊り迫り来落ち葉かな
・狐火の越えゆく峠家灯り
偽装網めいた枯れやう枯れ葎
男体山の風に身すくめ枯れ葎
○枯葎朽ち杙が立つ志士の墓
・狐火や遠き山家の薄灯り
・邪気払ふ太鼓の連打寒詣
・狐火のゆくぬばたまの夜の野末
・小春日や高々と打つ願ひ鐘
ミヨ
○小春凪ぎ風呼び戻るブーメラン
・狐火や古井戸残る屋敷跡
・枯葎廃れし銅山の発破小屋
・板戸絵の鯉に日の差す宿小春
・去年今年銅のケトルを磨き上げ
聖子
○狐火や磐梯山の暗き影
・藍色の闇迫り来る夕枯れ野
・急坂を上り詰めたる枯野原
アンティク燈ぽつぽつとつく枯野かな
狐火を見たやう暗き道すがら
・ボンネットに猫の足跡風花す
・狐火の連なり戸室山の裾
・枯れ葎音もなく舞ふ鸛
・狐火やはやぶさ2は宇宙へと
・古賀志山の古道を隠し枯葎
良人
・狐火のさまよひ消ゆる山の寺
・狐火や杉の並木の奥の闇
・山寺の墓石を埋め枯葎
過疎の村廃屋覆ふ枯葎
霊園の灯のなき所狐火か
木瓜
・機関車の音が揺らして枯れ葎
・牛鍋のとろけ崩れる葱突く
狐火や表紙剥がれた漫画本
狼の遠吠え続き冬の月
ふところに暖を取りゐる冬の日々
・狐火や父とトランプ遊びして
つれづれの旅にもありぬ枯葎
枯葎空に明日あり帰り待つ
無住寺を尋ね三和土の狐の火
戸を開けてみれば思わぬ初音かな