第288回 令和3年正月17日
兼題: 煮凝り 寒
寒念仏鬼のまとへる墨衣
石を抱く松の根を撫で寒肥す
息継ぎもせで寒声の般若経
煮凝りや音立て切れる炊飯器
寒雷や各戸に鍵の共同湯
美恵子
☆重箱をしまひ陽の香の干菜汁
・焚き上げに御札投げ入れ春渡る
・寒晴や富士見峠の富士聳え
・煮凝りを肴に他愛なき話
寒燈しトルコランプの華やかに
信子
△鳥除けの模造のカラス寒四郎
△煮凝や野州は海を遠くして
△卓袱台に五人の親子凝り鮒
・煮凝や東雲に止む昨夜の風
・ことさらに根つこ美味しと寒野芹
△初音かな社務所に若き巫女集ひ
・煮凝りや七戸の字に橋七つ
・寒の瀧谺は渓を出ることなし
・純白に燃ゆるといふ銘寒牡丹
煮凝りの揺れ運び来る裾捌き
ミヨ
△木遣歌坂のぼりくる斧始
・はだれ雪こけし人形目を伏せて
・煮凝りや徳利二本を空にして
・寒晒し堰の奥なる八溝郷
防潮堤砂州の彼方の波の花
比呂
△銅壺の湯ちんちん雪の降り止まず
・朦朧の誦経うやむや寒行者
・凝り鮒父生涯の江戸言葉
・冬晴の富士を遠くにざつこ釣り
木枯や風の電話に母の声
△節くれの手で七草の粥啜る
・寒の入り男体山の薙くつきりと
煮凝りに香り立つなり味噌の味
寒行のテレビに映つる白衣かな
寒四郎三密嗤ふ新コロナ
良人
・煮凝りと豆腐の汁と老い二人
・寒茜男体山の雲耀かせ
・寒晴れの山一筋の煙り立つ
・池塘吹く風に折れ伏し寒すすき
・動かざる寒鯉人の動きなく
聖子
・煮凝りや甘き香の立つ朝の膳
・煮凝りや食後五錠の薬飲み
煮凝りの匂ふや猫の膝に来る
軒下に列の眼科医冬の雨
寒風や自転車の長きブレーキ音
・こんもりと盛りて幸せ籠蜜柑
寒の内ちやらんぽらんば冷え切らず
拙守り生きてきたぞよ漱石忌
こはごはと抓む煮凝り息つめて
日向ぼこ生死の狭間ほのぼのと