第298回  令和3年11月27日 Zoom
兼題: 小豆 初冬


  利孟  
 半畳に親子三代寄り炬燵  
 振舞ひの新蕎麦打たせ嫁自慢  
 銭湯の煙突煤け冬初め  
 手拭の手縫ひの袋新小豆  
 泥のまま塚なし積まれ落花生  

  比呂  
☆小豆煮る鍋の火猫と見つめゐて  
・石に木に宿る佛や石蕗の花  
・警邏中の留守の交番ポインセチア  
・初冬や村の人皆縁つづき  
 畦に咲くあまた小菊の百曲り  

  信子  
☆夜半の冬月食城と対峙して  
・豆を引く葉擦れの音のひもすがら  
・出来愛でて丹波黒豆引く日かな  
・冬はじめ置いてはずらし床の壺  
 AIの選んだ動画秋ゆけり  

  良人  
☆堰落ちる水の静かに冬はじめ  
・音も無く畦に降る雨冬はじめ  
・初冬の日向の花に虫寄りて  
・山城の靄に囲まれ冬はじめ  
 日の暮れの真赤な夕焼け冬あさし  

  美恵子  
☆灰色の空に初冬の汽笛消ゆ  
・小豆選る世間話に花咲かせ  
・月蝕の画像メールで冬の夜  
 小豆練る祖母直伝の塩梅に  
 初冬や山影は錆び空低し  

  昭雄  
☆校庭の蛇口空向く冬はじめ  
・指で畝筵につくり新小豆  
 小豆煮る我の傘寿の日を迎へ  
 冬の森旧知のごとく泉噴く  
 空元気不漁秋刀魚を水揚げす  

  ミヨ  
・粗莚ひねもす広げ小豆干す  
・噴石の流れつく浜冬はじめ  
・那須颪松千本の古墳塚  
 弁当を広げ小春の一里塚  
 はぜ胡桃盛りて茶うけに郷の母  

  英郷  
・初はじめ栄誉賞など要りませぬ  
・冬ざるる実力主義といふ苦行  
 冬めくや山並み静かに白き月  
 肉じやがの香り温か冬はじめ  
 ぐつぐつと暖炉の小豆煮え続け  

  雅枝  
・お手玉を縫いてしやきしやき新小豆  
 フロントガラスの海に浮かびて鰯雲  
 口笛の路地に消えゆく冬初め  
 唇をすぼませて剥く青蜜柑  
 黄葉し君臨すなり大銀杏  

  木瓜
・老いてなほ畑に勤労感謝の日
 煮え立ての小豆手皿に頂いて
 沈黙の月食の夜や冬はじめ
 湯ざめして皮一枚の剥がれ落つ
 息白し一体何をしてきたか