第297回 令和3年10月30日 Zoom
兼題: 紅葉 新蕎麦


瀬戸合峡

  利孟  
 新蕎麦をたぐりそば湯に香のこもる  
 蕎麦打ちの手ほどき嫁に暮れ早し  
 星月夜スマホの星図明るくて  
 頬ずりをする子の肌の冷たくて  
 田を守り終へ道の辺の案山子どち  

  雅枝  
☆千人に紛れぬ吾子よ運動会  
△七彩の雲を呼び寄せ神の旅  
・丘の上銀杏黄葉の暮れ残る  
 芋茹でて熱湯火傷の泣き笑ひ  
 新そばをすする音と香店に充つ  

  聖子  
☆金風や英語で誉める盲導犬  
・熊除けの鈴の音遠く紅葉狩り  
・県庁の高階よりの初紅葉  
 新蕎麦や打ち場のガラス曇り無く  
 サブスクの服取り出して秋の朝  

  良人  
△新蕎麦をすする八溝の山近く  
△岩肌に色増す紅葉瀬戸合峡  
・紅葉山滝の白糸音も無く  
・新蕎麦や暖簾を揺らす釜の湯気  
・雲霧の覆ひ色濃き谷紅葉  

  昭雄  
△今年また小作年貢の新蕎麦粉  
△梯子降り空に残した柿ひとつ  
・錦秋や霊山仰ぐ露天風呂  
・小鳥来る朝の写経の筆休め  
・新蕎麦の仄かに青く香りけり  

  比呂  
△山小屋の屋根に干す夜具初紅葉  
・仕舞湯の踏まれてしまひ柚子袋  
・新蕎麦や蕎麦湯もあおき香を放ち  
・草紅葉歩荷は杖を立て休む  
・母の忌を修し銀漢濃かるべし  

  ミヨ  
△蓼の花碑のひとつ立つ札の辻  
・竹矢来飛び出し萩の花こぼれ  
・新蕎麦や九谷徳利に罅少し  
・姨捨の山の暗さや三十三才  
・紅葉かつ散るや絵島の一人墓  

  英郷  
△径はづれ雑木紅葉にさ迷へり  
・新蕎麦を啜り始まる苦労譚  
・石臼の回れば香り新蕎麦粉  
 見上げたる紅葉の先に碧き空  
 秋蕎麦を刈るや項を強張らせ  

  木瓜  
△ケセラセラ未婚の母に夕紅葉  
・走り蕎麦若さに似たる青さかな  
・うそ寒や駄句が名句にみえてきて  
 遣り甲斐もほどほどにして秋深し  
 草の絮詠み手知らなば味深し  

  美恵子
・新蕎麦や通の話の尽きもせず
・新蕎麦や取り分け目立つ県外車
・車窓より藁の香りや秋闌ける
・親と子の拾ひ紅葉の色競ふ
 木登りの子の包まれて柿紅葉