映画のページ

スパイ・ゲーム /
Spy Game /
Spy Game - Der finale Countdown

Tony Scott

2001 UK/USA 126 Min. 劇映画

出演者

Robert Redford
(Nathan Muir - CIA)

Brad Pitt
(Tom Bishop - CIA)

Catherine McCormack
(Dr. Elizabeth Hadley - レバノンの難民救済医師)

Marianne Jean-Baptiste
(Gladys Jennip - ムイアの秘書)

Larry Bryggman
(Troy Folger - CIA作戦本部副部長)

見た時期:2002年8月

要注意: ネタばれあり!

雑誌には批判が載っていました。1965年から1991年までの間を撮っているのに主演が髪型も変えていない、手を抜いているといった内容です。トニー・スコットを安易なポップコーン・キノ監督だと考え、嫌っている評論家のようです。私も確かに2人の俳優は能力の限界までエネルギーを出して演じてはいないと思います。2人のライフワークではありません。でも、けちょんけちょんにけなす気にもなりません。いい所もたくさんありました。

そこそこの経験のある俳優なら誰でも務まる作品です。レッドフォードは若作りをしたり整形手術をしない方針の俳優なので、彼が60年代の場面に登場する時は確かに無理があります。ピットはクルーニーとあまり年が違わないのに少年みたいな顔をしている時があるので、60年代の役は何とか務まりますが、逆に90年代がちょっときついです。ところが見終わってみると、外見はあまり関係ない映画だと分かります。要は頭脳です。

かなりばらします。見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

設定がしゃれています。事件が起き、解決するまでが24時間。レッドフォード演じるナサンは、CIA の建物の中にいるだけで、ほとんど外のシーンはありません。ピットが演じるトムは中国でスパイ容疑で捕まり、刑務所内で拷問され、翌日は死刑執行。その間にナサンの回想シーンが何回か入り、どこでトムと知り合い、過去に何をやって来たかが分かります。ベトナムで狙撃手をやっていたトムをナサンが CIA のスパイにリクルートし、一人前のスパイに育てます。ナサンの基本方針とトムが合わなかったので、中東勤務以降袂を分かちます。

ナサンはこの日が最後の勤務で、引退。アメリカ大統領が中国訪問を控えているので CIA はスパイを1人犠牲にする方向に動いており、トムは見捨てられそうになっています。翌日死刑の予定から見ても、手の施しようがありません。それをハッピーエンドに持ち込むまでの過程がスリルとユーモアにあふれて、はらはらしながら時々にんまり。ナサンという役に切れる頭とユーモアが盛り込んであったため、退屈する暇がありませんでした。トムは得な役で、カッコイイ青年、正義感、モラルのある理想主義者、恋もあり、ピットお気に入りの血みどろ、殴られるシーンもあり、ボロを出さずに上手に収まる役です。ボロは出ませんが、トムがナサンに失望するシーンは、ピットならもうちょっと突っ込んだ演技ができるのではと残念に感じました。

トムにベルリン、パレスチナ滞在中に教えた事はむろんナサンもできます。それで CIA の建物の中でも簡単に人の部屋に入ってしまったり、秘密裏に秘書と連絡を取ったりと、CIA の職員が CIA の建物の中で CIA の同僚、上司を出し抜きます。ここが巧妙でありながらユーモラスで、レッドフォードは楽しみながら演じています。

ベルリンのシーンは現在のドイツでは撮れないからと、ブダペストで撮影したそうです。以前国境だったチェック・ポイント・チャーリーは跡形もなく近代都市に変身しています。壁があったというのは歴史的事実で、たとえ暗い思い出であっても消さない方がいいと、よそ者の私たちは感じるのですが、当のドイツ人はできるだけ早く忘れたかったのでしょうか、あっという間に壁を取り除き、シンボル的な境のあった場所はビル街、ショッピングセンターになってしまいました。私も当時は国境を越える時パスポートの検査列に並び、1度などは亡命者が出た列車に乗り合わせ、止められた上、不安な思いをしたこともあります。そういう事を覚えているからこそ、現在の自由の良さが分かるわけで、痛みをすっかり忘れてしまうのが果たしていいことなのか、いかにも部外者の言いそうな事ですが、考えてしまいます。

ドイツの雑誌には「二枚目俳優が二枚目俳優にバトンを渡す映画だ」とありました。そういう感じはします。私の側からのこの映画に対する本当の不満を言えば、事件と救出の動機が、それまでの非情なベテラン・スパイクールなイメージから逸脱して、恐ろしくセンチになってしまったことです。それでも最後の救出作戦まではらはらさせられる作りになっています。体はあまり動かさないけれど、これはアクション映画です。

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