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運命の女 /
Unfaithful /
Untreu

Adrian Lyne

2002 USA 124 Min. 劇映画

出演者

Richard Gere
(Edward Sumner - 夫)

Diane Lane
(Connie Sumner - 妻)

Olivier Martinez
(Paul Martel - 古本商)

Erik Per Sullivan
(Charlie - 息子)

見た時期:2002年11月

要注意: ネタばれあり!

良く分からない映画を見てしまいました。ドイツではちょと前に公開され、今は場末の小さい館にかかっています。見に来た人は週末でしたがわりと少なく、時々笑いが漏れていました。私も笑いましたが、主演のリチャード・ギアは身を入れて演じています。

私はギアのファンではなく、評判だけを聞いていた頃はアンチ・ギアと言ってもいいような感情を持っていました。でも実際に見た映画はそれほど悪い物が無く、ハリソン・フォードばりの大スター扱いを受けているにしてはまじめに演技しているなあという感想で(大スターというのは有名だけれど不器用な人が時々います)、偏見は捨てました。好きなタイプの男性ではないのでファンにはなりませんが、見ていて安心していられる安定した演技。

タイトルが良く分からない・・・。運命の女となっているのですが、見ていると主人公のコンスタンス(ダイアン・レイン)が運命の男ポール(オリヴィエ・マルティネス)に出会ってしまったという不運が前に出て来て、彼女が男の人生に落とした影より、男が彼女の生活に与えた影響の方がずっと大きいです。「運命の男」とか「運命の日」、とか「運命の天気」とか、「運命の風」とか、「運命の通り」とか彼女以外の要素の方が一家の「運命」を左右します。

次に分からないのが・・・結構きれいでムードのある女性があんな男に惹かれるのか・・・という点。「フランスのブラッド・ピット」と言われるマルティネスの役どころはジゴロ青年なのですが、ジゴロ役は今回寝取られ亭主を演じるリチャード・ギアの方が上手という噂を聞いたことがあります。最近は違う役にもうまみが出て来て良くなったと言われているギアは、今回誘惑する役ではなく、被害者の方を演じています。なかなか丹念な演技で、いわゆる大スターとしては健闘しています。 マルティネスのどこがブラッド・ピットなのか考え込んでしまいました。本当にブラッド・ピットを連れて来てやらせた方が良かったかと思ったぐらいです。でもそれをやるとギャラだけで予算オーバーでしょうし、最近のピットはスナッチのような役を好んでいるようですから、首を縦には振らないでしょう。それにしてもマルティネスが正しいキャスティングだったのか考えてしまいました。

クロード・シャブロルのリメイクだと聞いてある程度納得。神経を逆撫でするようなシーンや設定が時々出て来ます。フランスの有名なエレベーターのシーンのパクリかと思われるような所もあり、それをギアがコメディー、スリラー、メロドラマを混ぜ、どたばた喜劇になる寸前、ぎりぎりの所で止めています。匙加減が難しいシーンです。

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前情報がなく、ドイツ語のタイトルは英語を訳しただけだったので、不倫がテーマになっているとは思いましたが、それから先どちらの方向に進むか分かりませんでした。犯罪映画に発展するのかとも思いました。結局ミステリー・クラブの人が好むような犯罪映画にはならず、ポールが命を落とします。ま、それは成り行きから言うと自業自得で仕方ありません。警察が登場するあたりは見つかるか、見つからずに済むか、とフランス風のスリルがあります。

ポールとコンスタンスの情事(あれ、ボディー・ダブルかなあ。顔と体が一緒に映るシーンがやけに少ない)、エドワードの苦悩、嫉妬、激情は時間も充分取って上手に描かれていました。後半警察が登場し始めてからちょっとテンポが上がってしまい、駆け足になったという印象が拭えません。自分しか知らない秘密だと思っていたら、夫の口からポロっと意外な言葉が出るシーン、事実を知っている者だけが持っている品物がみつかるなど、このあたりもう少し工夫しても良かったかと思います。

あんなずさんな捜査で良いのか・・・という疑問も浮びます。リンカーン・ライムやスカルペッタを読み過ぎると、警察はとっくに犯行現場で指紋、血痕、その他の証拠品を見つけても良いはずで、もう逮捕は免れないと思いました。ところが警察は部屋にあった電話番号のメモだけを手がかりにしています。この辺はリメイクの元になった映画が古かったのかと疑っています。指紋の事など気にせずコンタンスもエドワードもその辺を触りまくっています。最近では高校生でも犯行前に体をレインコートやビニールで覆い、手袋をして、頭にもカバーをして髪の毛が現場に落ちないようにするぐらいの知恵が働き、サンドラ・ブロック刑事の仕事をてこずらせるという時代ですからね。

良く分からないついでにもう1つ。ソーホーでコンスタンスがポールとカフェのトイレで逢うシーンがあります。上流の奥様がトイレで情事と、まあいわば格を落とすわけですが、スリルがあって本人は満足。彼女は髪を乱し、服装を崩して、カフェにいた女友達の所へ戻って来ます。カンの働く1人はコンスタンスに警告します。友人は見破っています。映画を見ている観客としては、全編に時々情事の後のシーンがあり、彼女が服をだらしなく着崩してして家に戻ったりするので、これで亭主にばれない方がおかしいと感じます。特にこの家庭は親子とも普段はきちんとした生活をしています。何だかわざわざ見つかるような事をしているように思えます。となるとこの不倫は人に「自分はまだもてる」と自慢するためにやっているのか、なんだ、つまらない、と興醒めしてしまいます。ま、相手を愛しているという感じには元から見えませんけれど。

あんな男に引っかかるのがおかしい、中盤まで亭主にばれないのがおかしい、警察が証拠を見つけないのがおかしい、 もう1人疑いを持っても当然という人がいるのに全然触れないのはおかしい、とまあ良く分からない映画ですが「おもしろく語られていればいい」という原則に従えばぎりぎり合格。全体を「いつばれるか」というテーマで通してあり、そこにスリルの焦点を置いています。

動機や成り行きは全然違いますが、最後エドワードとコンスタンスはイン・ザ・ベッドルームのファウラー夫妻と同じようなジレンマに落ち込みます。目の前に自分でやってしまった犯罪があり、2人は本来良心あるまじめな市民。この先どうするかという問題を抱えます。こちら、サムナー夫妻は10歳にもならない息子を抱えているので、簡単に自首もできません。この2人も針の筵です。最後警察の前で信号が赤から青になり、また赤になり、それでも車を出せないでいるシーンは2人の心をよく表わしています。ハリウッド映画にしては珍しく、終わり方が「アホ」でなくていいです。

サムナー夫妻の息子チャーリーを演じているエリック・ペア・サリヴァンは チル CHILL の少年です。チャーリーは特に優れた子供でもなく、特に劣った子供でもなく、ごく普通の坊や。幸せな家庭に育っていて、これまで苦労を知りません。適度に反抗してみたり、適度に素直だったり。ですからこの作品の役では目立ちません。この同じ少年がチル CHILL で だめな親を持ってとんでもない目に遭う息子を演じた時は1人だけ抜きん出て演技が光っていました。

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