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ジュエルに気をつけろ!/
One Night at McCool's /
Eine Nacht bei McCool's

Harald Zwart

2001 USA 93 Min. 劇映画

出演者

Liv Tyler
(Jewel - 男をたぶらかす魅力的な女性)

Matt Dillon
(Randy - ジュエルに喜んでたぶらかされる男1)

John Goodman
(Dehling - ジュエルに喜んでたぶらかされる男2、警察官)

Michael Douglas
(Mr. Burmeister - ジュエルに喜んでたぶらかされる男3)

たぶらかされる男は他にもいます。

見た時期:2001年8月

この作品については井上さんの名文があるので、まずそちらを参照して下さい。思いっきり力の入っていない作品とあります。私も井上さんの記事を全面的に支持しますが、その力の入っていない作品を新しい会社設立後の第1作目に持って来たダグラスのユーモアには感動。

リヴ・タイラーの作品はジュエルに気をつけろ!が3本目だったのですが、3本とも「なんのことない、この映画、リヴ・タイラーの魅力だけでできているようなシロモノ」で、本人は演技らしい演技をせず、ただそこにいるだけ。監督と周囲の男性がそこに立っているタイラーにひれ伏したような作品(大監督自ら脚本まで書いている魅せられて、2人の男に好かれているプランケット&マクレーン、そして出会う男を全部狂わせてしまうジュエルに気をつけろ!)で、何とも得な人だと感心。日本人の趣味から言うと、ちょっとボリュームがあり過ぎて近づき難い感じもしますが、そんな事にはめげない方も多々おられるようで。当方キャメロン・ディアスのファンなのでどうも好みが合いません。(同じように監督が主演女優にひれ伏しても、タランティーノはご立派。根性入れて演出しています。使われる女優もド根性でアクションに挑んでいます。スカッと気持ちがいい。)

さて映画の方はちっともおもしろいと思わなかったのですが、この作品にはコメディアンを目指している人が2人登場します。いえ、ジョン・グッドマンの事ではありません。ジョン・グッドマンはベテランの才能あるコメディアン。もう完成しています。そうではなく、マッド・ディロンとマイケル・ダグラスです。ですからこの記事はコメディアン・シリーズの一環と考えて下さい。タイラーが演技ができるかどうかに関わらず、グットマン以下男性軍はせっせと笑いを取っていました。

マット・ディロンは以前ティーンのアイドルだったのだそうです。その時期の作品は全部逃しているので分かりませんが、かなりのスターだったようです。フランシス・フォード・コッポラが彼を主演にしていることを考えても、知らなかったのは私だけで、世間ではかなり認められていたようです。

・ ランブルフィッシュ
・ イン・ベッド・ウィズ・マドンナ(ドキュメンタリー)
・ グレイス・オブ・マイ・ハート
・ イン&アウト
・ ワイルド・シングス
・ メリーに首ったけ
・ ジュエルに気をつけろ!

を見ていますが、是非見たいのに見逃しているのが誘う女。私が見た作品だけで比較するとコメディーの比率が高いですが、ディロン=コメディアンと決めつけることはできないでしょう。

良いなと思ったのはメリーに首ったけ。天才少女キャメロン・ディアスにはコメディーが1番向いていると思いますが、その彼女を前に、陰険な探偵の役をやったディロンも良かったです。この作品では本職のコメディアンのリー・エヴァンス(ひいきにしています)とベン・スティラーを向こうに回して、一般にはコメディアンとして通っていないマット・ディロンとキャメロン・ディアスも負けていませんでした。堂々たる演技です。ディロンは性悪女にひどい目に遭う役も良いですが、アーノルド・シュヴァルツェンエッガーも得意とする陰険な目線のコメディーもいいです。ああいう味を出せるのは稀少価値です。応援しています。

ダグラスの方は

・ 巨大なる戦場(親子共演)
・ コーマ
・ チャイナ・シンドローム
・ コーラスライン
・ ゲーム
・ ワンダー・ボーイズ
・ トラフィック
・ ジュエルに気をつけろ!

あたりですが、コメディーは多くありません。もともとこの人はスター扱いで、カッコイイ役を中心にやっていました。最近宗旨変えをしてコメディーに乗り出したと言った方がいいでしょう。ワンダー・ボーイズはどたばたやるのではなく、設定がおかしいというタイプのコメディーでした。タイプライターの前に座って淡々とキーを打つ作家という役ですが、二百何ページとかの数字を打ち始めるので、観客がてっきりスランプで書けない作家なのだろうと思い込んでいると(出版者の編集長ロバート・ダウニー・ジュニアが原稿の催促に迫って来ます)、実は二千何ページで、書き始めて止まらないので悩んでいるのです。普通は筆が進まないと悩むものですが、中にはこのダグラスのような悩みを持つ人もいるんですね。この気持ち分かる人がその辺にいるような気がします。

ところで日本人が英語の映画のタイトルをカタカナでつける時複数の s を落とすことがありますが、ワンダー・ボーイズにはちゃんと最後に「ズ」がついています。この映画の場合大切で、スパイダー・マン氏だけがワンダー・ボーイなのではなく、ダグラスもその1人です。天才はどこか抜けているというわけで、ダグラスも自分の人生をきちんとマネージすることができません。それであちらこちら笑いを取れるような失策をしでかします。こういうタイプのコメディーにダグラスは向いています。自分の方からどたばた、じたばたやらない方がいいでしょう。ちなみにワンダー・ボーイズの向こうを張ったのか偶然なのか、同じ頃ダグラスと同じぐらい知名度の高いショーン・コネリーが文才のある少年の面倒を見る作家の役で映画を作りました。しかし楽しさから言うとこの勝負はダグラスの勝ち。私はずっとダグラスが嫌いだったのですが、ワンダー・ボーイズあたりからあちらも転機、私の嫌悪感も転機を迎え、今ではおもしろい人だなあと思って見ています。ジュエルに気をつけろ!ではヘアー・スタイルに凝り過ぎてあまりコメディーとして成功しているとは言えませんでしたが、自分が昔出た有名な映画のパロディーをやるあたりは余裕しゃくしゃく。自分を自分で笑えるようになればいよいよコメディアンとしてのキャリアが開けて来るのではと期待しています。

グッドマンは以下の作品を見ていますが、

・ 赤ちゃん泥棒
・ 床下の小人たち(子供向け)
・ 悪魔を哀れむ歌
・ ブルース・ブラザーズ2000
・ ビッグ・リボウスキ
・ 救命士
・ 2999年異性への旅
・ オー・ブラザー!
・ コヨーテ・アグリー
・ ジュエルに気をつけろ!

コメディーが中心です。

後記: その後

・ 狼の死刑宣告
・ In the Electric Mist

が加わりました。

それは当然。サタデー・ナイト・ライブ、ダン・アクロイド、コーエン兄弟などとすばらしい環境にいる人です。唯一心配しているのが健康問題。病気だという話を聞いたわけではありませんが、コヨーテ・アグリーに出演していた時は、むくんでいて顔色が悪かったので本気で心配しました。さて、私が見たグッドマン作品で1番古いのは赤ちゃん泥棒。その後ボカっと穴が空いて、子供用の映画。その次はなぜこんな作品を作ったのかがさっぱり分からなかった悪魔を哀れむ歌。グッドマンの他にデンジル・ワシントン、ドナルド・サザーランド、ジェームズ・ガンドルフィーニが出ており、かなり凄い映画ができるメンバーなのに、つまらないオカルト映画になってしまいました。コメディーではありません。その後はほぼコメディー。ブルース・ブラザーズ2000ビッグ・リボウスキのグッドマンは存在感も大きく、なかなか良いです。2999年異性への旅というのはコメディーですが、グッドマンはあまり強調されず、ギャリー・シャンドリングが前面に出て来ます。変なストーリーで、オスカーにもノミネートされたアネット・ベニングの品位を落とすのにぴったりの作品でした。彼女がなぜそんな作品の出演を承知したのかも謎です。

話が横にそれましたが、ビッグ・リボウスキはコーエン兄弟が言うようにグッドマンのために作られたような作品です。リボウスキはブリッジズの役名ですからブリッジズの映画かと思いますが、グッドマンには個性のある役が与えられていて、非常に引き立ちます。その彼をますます引き立てるためにスティーヴ・ブシェミが配置されていて、本来のビッグ・リボウスキ(デヴィッド・ハドルストン)は目立ちません。本当は気のやさしい人らしいグッドマンですが、この作品では恐ろしく気が短く、凶暴性のある元兵士。恐いですが大笑い。この人はコメディアンを目指し、コメディアンになり、コメディーで成功している人です。

普段はコメディーをやらないダグラスデ・ニーロなどが最近コメディーに乗り出し、本職の人はさぞ戦々恐々としているだろうと思いますが、グッドマンにはがんばってもらいたいです。最後になりましたが、あの巨体で非常にリズム感が良く、ブルース・ブラザーズ2000では蝶のように舞い、蜂のようにぴたっと刺し、リズムを決めていました。オスカー授賞式でも喉を披露。ぜひブルース・ブラザーズ 3 を撮ってもらいたいです。ジョン・ベルーシ−の弟ジェームズもやる気になっているとか。

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