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ヘルボーイ /
Hellboy /
Super Sapiens

Guillermo del Toro

2004 USA 122 Min. 劇映画

出演者

Ron Perlman
(Hellboy - 悪魔の子供)

John Hurt
(Trevor Bruttenholm - 教授、ヘルボーイの育ての親)

Selma Blair
(Liz Sherman - 超能力者、火を扱う)
Millie Wilkie
(Liz Sherman - 若い頃)

Jeffrey Tambor
(Dr. Tom Manning - オカルト嫌いのチーフ)

Rupert Evans
(John Myers - FBIエージェント)

Corey Johnson
(Clay - FBIエージェント)

Karel Roden
(Grigori Rasputin - 悪の権化)

Ladislav Beran
(Kroenen - 科学者、トゥーレ協会会長)

Biddy Hodson
(Ilsa - ナチの残党)

Kevin Trainor
(Broom - 若い頃)

Rory Copus
(屋上の子供)

David Hyde Pierce
(Abraham Sapien、声)

Doug Jones
(Abraham Sapien、体)

Brian Steele
(Sammael)

Mike Mignola (Knight)

見た時期:2004年8月

2004年 ファンタ参加作品

後期: 井上さんといくしまさんから日本の情報が入りました。井上さんからの連絡では日本は122分でなく、132分なのだそうです。ダイレクターズ・カット。私はうらやましくてカリカリ。その直後にいくしまさんから連絡が入り、日本はDVDが122分で、欧米は132分とのこと。ということはDVDを買うか借りるかすれば、こちらでも欠けていた10分が見られるということ。良かった。

ファンタで公開された時は8分のクレジットを監督の了承を取ってかなり縮めていました。その分インタビューに時間を割き、その後サイン会。デル・トロ監督は長年の夢を実現できたので大喜び、陽気にたくさん語ってくれました。彼の様子を見ていると、ヘルボーイの監督だというのに納得しますが、実はこの人デビルズ・バックボーンも撮っています。ヘルボーイとは全然雰囲気の違う作品です。ヘルボーイにやや近いのがブレード 2。これもデル・トロの作品です。監督は日本びいきなのですが、ブレード 2のシーンを見ると納得します。ユーモア、主人公の内面に触れるなどという面から考えると、ヘルボーイブレードと一線を画すだけでなく、他の監督が撮ったスーパーヒーロー物、漫画の映画化ともかなり違います。それを演じられるのはパールマンしかいないと、思い込んだら一直線。7年粘ってパールマンを通しました。かなり駄々をこねたようで、パールマン自身は半ばあきらめていたという話も聞いています。しかし、結果をごらん下さい。通した甲斐ありました。こんなチャーミングなスーパーヒーローは見たことがありません。

スペシャル・ゲストの来独がかなったので、あずみと入れ替えになり、ファンタ最終日、フィナーレの1つ前の作品となりました。私はフィナーレはパスしたので、これがファンタ最後の作品となりました。なお、例年フィナーレの後にデザートがあり、今年はヘルボーイと交代になったあずみを再上映しています。

ドイツ語で hell というと《明るい》という意味なので、つい《明るい坊や》と思ってしまうのですが、実は Hellboy は《地獄小僧》という意味。どうもその辺の勘違いが起き易く、私はつい可愛い坊やと思ってしまうのです。しかし監督が言っているように、坊やと言うような年の Boy ではなく、ギネスブックに登録しようかというぐらいの、世界で1番年寄りのスーパーヒーロー登場です。演じるパールマン、御年54才。

原作はマーヴェル漫画のヘルボーイ。漫画の映画化で気に入った作品はほとんど無かったのですが、ヘルボーイは素晴らしい出来。元々この漫画のファンだという監督がどうしてもと希望した主演が最高の演技を見せています。監督がこの話を受ける時に提案した俳優は、世間的にはあまり知られておらず、主流でない映画を見る人の間で知られているだけ。一般人に聞いても思い出してもらえるのはエイリアンの1作ぐらい、それも俳優の名前を覚えている人はいるだろうか、いや、あの御面相しか覚えてもらえなかったかもしれないという人。若手のヴィン・ディーゼルがスタジオ関係者の提案だったそうです。

ヴィン・ディーゼルもピッチ・ブラックなどはすてきですが、私はエイリアン4の印象が良く、パールマンのファンだったので、この話を聞いた時には本人と同じぐらい喜んでしまいました。本人に会ったので、そのことを言ったら、(当然ながら)「僕も喜んだ」とうれしそうに言っていました。その上ヘルボーイ 2というのがもう計画されており、監督、主演は続投になっているので、うれしい限りです。私は面食いなのですが、本当に好きな人というのはゴリラなど猿系の顔をしている傾向があり、ルイス・グスマンなどが好きな俳優のリストの上位に載っています。パールマンは演じている時に本人のキャラクターもにじみ出ているような気分になる人。もちろん職業は俳優ですから演じているだけなのでしょうが、何となく私生活でもこういう人なのではないかと錯覚に陥ってしまうような人です。その彼の良い面がてんこ盛りされているのがヘルボーイです。

原作の漫画は見ていないのですが、話を聞いていると、特に大きく変えてはおらず、詳しく描写される部分がやや監督の意向に合わせてある程度だそうです。

漫画を知らないので映画の方でストーリーの説明をします。見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

第2次世界大戦中のナチを悪者にしておけば大多数の人が納得するので、ここでもナチが悪魔の計画を実行している最中。戦況が不利になっている中、ナチはスコットランドの人里離れた場所に大規模な要塞を作り、何やらエゾテリック風の妙な実験をしています。これが成功すると、悪魔世界の助けを借りてナチ側の体制が大きく立て直される、世界を征服できるという趣向。連合軍はその情報を握っていて、兵を送って来ています。周囲を取り囲みいざ戦闘という時、ナチの側はいざ実験開始という段階で、スイッチが入ると同時に戦闘も開始。結局ナチは負け、連合軍が破壊された場所を調べて回っています。そこで発見されたのが地獄から呼び出されて、こちら側に来てしまった悪魔の赤ん坊。本当に色が赤い赤ん坊。これがお猿さんそっくり。ちょっと違うのは角と長い尻尾がついている点。しかしチョコレートでつられてしまうなど、人間の赤ちゃんとほとんど変わりません。危うく殺されてしまうところを、ブッテンホルム教授に救われます。

教授はこの坊やを連れ帰り、育てます。ブレードは吸血鬼と人間の混血でしたが、ヘルボーイは完全な悪魔。しかし環境が人を変え、いえ、悪魔を変え、心は人間。人間にも悪魔の心を持った人がいますが、ここはちょうどその反対。人間の心を持った悪魔です。発見されたのが生まれたばかりの1944年、現在は2004年ですからヘルボーイは還暦。しかしロン・パールマンの堂々たる体格で中年といった感じ。その上心はまだ12歳、13歳程度の少年。悪魔は新陳代謝が人間と違うらしく、教授は老人になっていますが、ヘルボーイはまだ頑丈そのもの。

アメリカではMIBがエイリアンの調査をやっていますが、異常現象調査及び防衛局というのもあり、ヘルボーイはそこに所属して任務を請け負う毎日です。同僚は両棲人間のエイブや火を自由に扱えるリズ、そして任務の管理をする普通の人間ジョン・マイヤーズ。彼はFBIの所属です。教授も上の方で指揮を取っています。

戦時中の計画に失敗したナチの残党は戦後も仲間をかき集めて密かに悪い事をたくらんでいます。こちらの仲間はクルーネンとブロンドの女性。そして1944年のドサクサであちらの世界に行ってしまったラスプーチンを呼び戻します。で、両者の対決が始まり。大活劇の始まり始まり。

具体的な任務は烏賊と蛸を合わせたような気持ちの悪い怪物がニューヨークの町に出没するので、それをやっつけること。私は思わずあれを刺身にしたら何人分できるだろうかと考えてしまいました。行けません、そういう不謹慎な事を考えては。でもあれ、生で食べるとどんな味がするだろう・・・?オールド・ボーイのおっさんでも食べるだろうかなどとつい考えてしまいます。

この怪物は増殖が早いので退治するのは大変。仲間内にも怪我人が出、肝心の教授は仮死状態で研究所に入り込んだクルーネンに殺されてしまいます。それで残った仲間が一致協力して対決。最後はめでたしめでたしです。

漫画はあまり好きでない上、これまでスーパーマンスパダー・マンバットマンなどを見ても乗り気にならなかった私ですが、ヘルボーイにはえらく感心しました。漫画の評判がいいとそれがボーナス・ポイントになって観客の数が増えるのだなと痛感。漫画を読まない私はこれまでこういったスーパーヒーローの話、どれを取ってもさほど心に残らなかったのです。

ヘルボーイが感動の名作になったのはロン・パールマンに負うところが大きいです。彼はリズにぞっこんなのですが、リズは自分の悩みに忙しく、ヘルボーイとのんびりロマンスという状態ではありません。それを遠くから見守っていたヘルボーイですが、普段は減らず口の乱暴者で、何が起きても図太い神経、マジに取りません。恐ろしい怪物と対決するのですからそういうキャラクターが1番合っているのですが、恋愛は下手くそ。そこへスマートな新米FBIが現われ、自分の超能力に恐れを抱いているリズを優しく慰めます。それが気になって仕方ないヘルボーイ。屋上から下でジョンと話をしているリズを見ながら近所の子供と話すシーンは名場面、1950年生まれのロン・パールマン、オスカーに値します。スパイダー・マン 2がかすんでしまいます。殺害された育ての親の教授の葬儀には赤い悪魔の格好のヘルボーイは参列できません。雨の中1人離れた所から見守っています。雨はヘルボーイの涙・・・こう いう月並みな演出なのに、際立った良さです。パールマンにはこういう演技ができるだろうと思ってファンをやっていたのですが、その甲斐がありました。監督 もその辺を知っていたからパールマンを強引に引っ張ったのではないかと思います。

ベルリンの会場では監督の方が陽気でパールマンはつつましく横に控えており、あまり発言はしませんでした。サイン会でもパールマンは物静か。デル・トロ監督は私には大サービスで日本語の歌まで登場。この漫画好きの陽気な人物がヘルボーイの監督をしたというのは分かるのですが、デビルズ・バックボーン の監督をしたっちゅうのがよう分からんのですよ。あれはアザーズを抜く落ち着いた静かな雰囲気の幽霊話で、ファンタでも受けていました。セルマ・ブレアがこれまた物静かで親切な人。警備の人が止めるのにサインをしてくれました。

パールマンは作品中では大男に見えるのですが、身長は188センチ。ちょっと大柄という程度。あれは全部カメラの角度で大きく見えるようにしたんだとか監督が言っていました。ヘルボーイの上半身はどっしりとしていて、あんなのに迫られたらこちらはつぶれてしまうという印象ですが、本当のパールマンは色白でスッキリした体格です。髪はごま塩。54才といいますが、44才で通りそうです。デル・トロ監督はマイケル・ムーア風で、声も ああいう感じですが、サービス精神や陽気さはアメリカ的。セルマ・ブレアはしっとりとした穏やかさが漂う人です。この日はどういうわけかヘルボーイが主演 なのに監督とブレア嬢に群がった人が多く、ちょっとヘルボーイが気の毒でした。あの屋上のシーンがダブります。

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