2003 USA/Kanada/D 97 Min. 劇映画
出演者
Edward Burns
(Jake Vig - 詐欺師)
Paul Giamatti
(Gordo - ジェイクの子分)
Brian Van Holt
(Miles - ジェイクの子分)
Louis Lombardi
(Alphonse Moorley - ジェイクの子分)
Rachel Weisz
(Lily - すり)
Robert Forster
(Morgan Price - 銀行頭取)
Morris Chestnut
(Travis - 銀行頭取の部下)
John Carroll Lynch
(Grant Ashby - プライス銀行副頭取)
Leland Orser
(Lionel Dolby - かも)
Donal Logue
(Lloyd Whitworth - 刑事)
Luis Guzmán
(Omar Manzano - 刑事)
Dustin Hoffman
(Winston King - 地域のボス)
Franky G
(Lupus - キングの子分)
Tom Lister Jr.
(Harlin - キングの子分)
Andy Garcia
(Gunther Butan - 広域捜査官)
Barry Blueian
(税関吏)
見た時期:2005年10月
途中映画祭情報が続きました。その前現実、また現実に近い犯罪物語が続いたので今度はちょっとお遊びの犯罪ゲーム。
ペテン師の話が時たま映画化されます。現実にどのぐらい近い話なのかは想像もつきません。現実の方がもっと巧妙なのかとも思います。映画化する時には一種のルールがあるようで、あまり本格的な血みどろなシーンは出て来ません。頭で勝負という面を強調してあります。心理学を応用してある話が多いですが、それを前面に出す話もあれば、それは裏の方にしまってある場合もあります。
これまでに見たペテン師の話にはおもしろい物もあり、私も嫌いな方ではありません。例えばちょっと前のマッチスティック・メンは明るい画面でおしゃれな作り。大分前のスリル・オブ・ゲームは普段は人の心を分析している心理学者が見事に引っかかるという主客逆転の話。2004年の Seven Times Lucky もペテン師の話です。考えようによってはテレビ版のスパイ大作戦もペテン師集団。動機に政治が絡んでいる、相手が外国の軍人や政治家だというだけで、手口はここに挙げた他の作品と似ています。というわけでペテン師の映画はおもしろい物が多いです。ただ、やり過ぎると及ばざるがごとしで、ちょっと食傷気味になります。コンフィデンスはちょっと話を前後させ過ぎたり、絡む話が多過ぎたような気がします。匙加減が今一つという感じでした。
出演者の中にはきれいに決まっている人もいます。新旧のベテランが出ていて、アンディー・ガルシアとダスティン・ホフマンが脇を締め、そこへいずれ大ブレークししそうな若手、万年脇役ではありますが、味のある脇役ですでに名を成している人たちが出ています。この配役は8割がた成功しています。
しかし配役を決める時に無名、あまり有名でない人を出して筋に集中するか、カリスマ性のある有名人を呼んで来て、ゴージャスな雰囲気で持たせるかを決めてからかかるべきだったのではないかと思います。エドワード・バーンズは悪くないのですが、見ていると時々ベン・アフレックの顔がちらつきます。バーンズを生かすつもりだったら、共演者の顔を多少入れ換えた方がいいように思います。ガルシアとホフマンを連れて来るのだったら、アフレックの方が良かったかも知れません。アフレックは最近ずっと不発続きですが、やる気を出すと物凄いテンションで演じることもできる人。何とか説得してやる気を出させれば良かったかとも思います。
大物をはずしてやるとすれば、バーンズを主演に、グスマンやジャンマッティーを相棒にというのはバランスが取れていて良かったです。そうなるとフォスターなどは良い選択です。ガルシアも有名人ではありますがこのままで行けたかも知れません。するとデニーロ、パシーノなどと肩を並べるホフマンが浮いてしまいます。本人はこの役を気に入ったのかも知れませんが、大スターと肩を並べても見劣りのしない50歳以上のベテラン脇役を連れて来るべきだったかも知れません。
ペテン師の話は結局は誰が誰とグルかが1番問題なわけですが、コンフィデンスではそれは1番最後にならないと分からないようになっています。観客をあっと驚かすのは監督の義務の1つです。もう1つの特徴は上にも書いたように、あまり血が滴る暴力映画にしないという点。ハイ・テンションのような暴力的な映画に弱い人でもゆったりした気分で見ていられる作品が多いです。コンフィデンスには血は何度も出て来ますが、それは偽の血。本当に人が死ぬシーンでは誰かが銃をかざした、音がした、誰かが倒れたとなっているか、もう死体になってその辺に置いてあったという平和的な演出になっています。そして普通の場合は目的はお金をかすめ取ることで、あまり誘拐とか核兵器を密輸などという物騒な話は出て来ません。
となるとあとは人の出入り、会話、知恵で持たせるわけですが、ここでファンタに出た他のペテン師映画にやや負けています。パルプ・フィクションのように最後の方から話が始まり、なぜこうなったのかという回想で3週間ほど時間が逆戻りします。ピストルで脅されている主人公が、あの時は実はこうだったと、外から見えている話と実際の話を敵に聞かせるという進み方をします。
日本で出たパンフレットを見せてもらったのですが、ぺらぺらの紙1枚。「何だ、お粗末な」と思いましたが、よく考えてみるとパンフを作る人は話をばらせないのです。ですから書ける事に限りがあります。そうなると写真を並べるしかない。ところが話が展開するのは飲み屋やキャバレーの中、路地が多く、ロードムービー的な要素はゼロ。ロマンチックな男女の話でもないので出せる写真にも限りが。ってなわけで紙1枚に全部まとめてしまったようです。
話の中心になっているのはキングと呼ばれる地域のボス、彼といざこざを抱えているジェイク(ジェイクの友達がキングの舎弟に殺されているところから話が始まる)、そこへ新たに話に加わるのが銀行家。キングに金を返さなければ行けないジェイクは、自分の仲間と、キングから見張りとしてつけられた舎弟の合計4人、最近リクルートした美女、汚職警官2人で行動します。いざこざの代償として新たなペテンでキングに大儲けをさせるということで話がついています。ペテンのターゲットはプライスという男の銀行の副頭取。彼を丸め込んで大金をせしめ、キングに金を返すという風に計画が進みます。そこへ後から登場するのがアンディー・ガルシア演じる連邦警察の捜査官。長年ジェイクを恨んでしつこく追っています。
丸め込まれた銀行の副頭取は500万ドルをカリブ海にある小国へ送金してしまいます。その金をジェイクの仲間が引き出し、本国へ持ち帰る計画。うまく行きそうな時に銀行の頭取に事がばれます。ばらしたのはジェイクともめて腹を立てたリリー。話が終わるまでに何度か裏切りが出て来ますが、話が入り組み過ぎ、伏線が甘く、後でばれても観客はあまり驚きません。
ペテン師の話は元々話が不自然なほど良いタイミングで入り組むものですし、隠してある秘密が後でばれるように作られるので、どうしても人工的にならざるを得ません。ですから勝負は監督、俳優がそういう与太話をいかに本当らしく見せるかにかかっています。その点でコンフィデンスは不成功に終わっています。キャストではダスティン・ホフマンが強過ぎ、レイチェル・ワイズが弱いです。
彼女はブランドン・フレイザーと共演したミイラ話ハムナプトラでは良い面を出していたのですが、本人はこういう役を嫌い、その後コメディー路線から足を洗っています。行った先は例えばニューオーリンズ・トライアル。これも一種のペテン話ですが、目的はお金をだまし取る事ではなく、かつてひどい目にあった男を懲らしめる役でした。トリックを駆使してという点では良く似ています。共演のジョン・キューサックとのコンビも良く、謎の雰囲気をかもし出していました。彼女でなければだめというほどの配役ではありませんでしたが、十分つとめは果たしています。コンフィデンスではミスキャストと言ってもいいかと思います。髪型やメイクを何度も変えて登場できるので女優としては楽しいかも知れませんが、演技が役にはまり切らず、私は見ている間中「他の誰だったらもっと上手に演じただろう」と考え続けていました。彼女が上手に演じていたら、ただ花を添えたというだけでなく、作品が輝いたかも知れないのです。しかしわざとらしい演技が続き、うんざりしてしまいました。
私はキャサリン・ゼタ・ジョーンズは好きではないのですが、彼女ですらワイズよりは上手に役にはまったのではないかと思います。やり手のすりで犯罪に対しては躊躇いが無い、それでいてジェイクとの関係では純情、本当に組んでいる相手とは信頼し合うという部分と、詐欺をやっている最中裏切られたからと怒って敵地に乗り込み相手側にたれ込む、怒った顔をして銃をぶっ放すという両面で真実味を出さなければならないので、簡単な役ではありません。
先ほど主演にベン・アフレックの名前を出しましたが、詐欺の裏表両面を出すところ、エドワード・バーンズは十分役がつとまっています。ジャマッティー、グスマンなどの脇はベテラン。こういう役は得意な方ではないかと思います。ワイズが全体をだめにしたというより、2つのタイプの配役を混ぜてしまったことに大成功しなかった理由があるのではないかと思います。
例えば同じ詐欺の話でもユージュアル・サスペクツには非常に快く騙されました。ストーリーにはあちらこちらに穴が空いています。それでも私たちは税関吏シャズ・パルメンテーリと一緒に見事に騙され、腹を立てる気にはならず大笑いしました。残念ながらコンフィデンスはそのレベルには達していませんでした。
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