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Terra

Aristomenis Tsirbas

2007 USA 85 Min. アニメ

声の出演

Evan Rachel Wood (Mala)

Dennis Quaid
(Roven - マーラの父親)

David Cross (Giddy)

Brian Cox
(Hemmer - 将軍)

Luke Wilson
(James Stanton - 少尉)

Chris Evans
(Stewart Stanton - ジェームズの弟、軍人)

Rosanna Arquette

Amanda Peet (Maria)

James Garner (Doron)

Danny Glover
(Chen - 大統領)

Ron Perlman

Danny Trejo

見た時期:2008年8月

2008年ファンタ参加作品

2004年のファンタに短編バージョンが出ていました。当時も私は登場人物がかわいらしくて好感が持てると書いていました。忘れていた!

今年は普段あまり積極的に見ない作品と、できるだけ多くの国の作品を見ようと決めていました。その1つがアニメ。

私はアニメに無関心ではないのですが、何でもいいという性質ではなく、予告を見たり情報を耳にして良さそうだと思ったものを選んでいました。

ドイツに来てからは接する機会が皆無になってしまったのですが、ある時普通の映画館に意外な日本の犯罪物アニメが出ました。懸賞に当たって見に行った私は劇映画にしてもいいぐらいのストーリーだったので目を見張ったものです。日本のアニメがドイツの普通の映画館に出て、大人が見てもバカにできないしっかりした筋だったというのは意外でした。

その後時たまファンタでこれはと思う作品は見ていました。ファンタはしかし必ずしも一般のファンばかりでなく、自分はオタクだと自覚している人も多いです。顔見知りの毎年来る仲間はアニメ・ファン、ゴジラ・ファン、スプラッター・ファンなどいくつかのジャンルに分かれています。私のように良さそうだったらどのジャンルでも何でも見るというファンももちろんたくさんいます。

不思議なことにアニメ・ファンはもっぱら日本のアニメが好きで、他の国のアニメに凝っている人は見かけません。ファンタには無論他の国のアニメも出ます。多いのはアメリカ。長短出ます。短篇ですと他の国からの作品も多く、私が気に入ったものもあります。ところがこういうアニメには特別なファン層というのはできていません。

さて、今年はオープニングの前に参加作品のトレイラーを見る機会がありました。ここ何年かファンタでは同じ枠に似たような作品が並び甲乙つけ難いため選ぶのに苦労するという事態が続いていました。そのため事前にトレイラーを見ることができると非常に助かります。去年などは誰かが、ベルリンのプログラムで重なるトレイラーを2つずつ並べてくれたりしたので大いに助かったものです。主催者もトレイラーのリンクをつけてくれることが多いので、私はそれを覗いてみました。その印象が良かったので Terra を見ました。

本来私は教育映画はあまり好きでなく、アニメですとイノセンススキャナー・ダークリー系の方が好きです。アニメというのはほとんど何でも表現できるので SF に向いていると思います。SF は好きな方です。それに比べると Terra はお子様同伴 OK のハッピーエンド映画で、見終わって世界の平和を・・・というような筋です。

それでも見てみようかと思ったのは画面がきれいだったからではないかと思います。テラという星で人々(とは言ってもテラ星人)が幸せに暮らしています。そこへ邪悪な地球人がやって来て、星を破壊するが、1人の宇宙飛行士がマーラというおませなテラ星人と触れ合い理解し合い、助け合うというストーリーです。

★ あらすじ

問題無く幸せに暮らしていたテラ星人。そこへ突如やって来て攻撃をする地球人。地球人は地球の他にすでに3つの星を食い尽くし破壊し、自分たちは滅亡の危機に瀕していました。テラ星にやって来たのは新たに食い尽くす星を探していたためです。

大気の混合が違い、地球人は酸素ボンベなしには生きられないのがテラ星。そのため大気を変えてしまおうとします。これまで平和しか知らなかったテラ星人は不意打ちを食らい、大勢が死にます。

そんな中、ロケットが墜落して重傷の地球人ジェームズを父親と暮らしていたおませな少女マーラが救ってしまいます。傷を治しかくまうのですが、ばれたら大変。しかも吸う空気が違うので、ジェームズのために特別な空間も用意しなければなりません。いくらか心が通じたジェームズとマーラですが、マーラの父親が地球人のロケットに囚われてしまいます。

父親の救出に向かったマーラとジェームズ。ところがジェームズは自分が信じていた地球人がテラ星に災厄をもたらす存在で、平和共存とか友好とは全く縁の無い計画を立てていたことを悟ります。その上自分の兄弟までもが破壊しか考えていない将軍に従うという道を選び、ジェームズ自身は厳しい選択を迫られます。

一方平和しか知らず、星を守る術も知らないと思われ、前半やられっぱなしだったテラ星人は実は何世代も前には闘うことを知っていました。ある時、方向転換をし、兵器、軍備に別れを告げ、一般市民は平和のみを知る毎日でした。しかし上層部の一部は軍備を保持しており、戦うことは可能でした。長い間そういう物を使わずに来られたのですが、地球人襲来で、また闘うテラ星人に戻らなければならなくなりました。

と言うわけで大戦になります。決着はジェームズの自爆でつきます。ジェームズは地球人を攻撃することで自らの命を犠牲にします。彼が狙ったのはトップの将軍。その結果残った地球人はテラ星内に作った大気を地球に合わせた空間に住みこれからはテラ星人と平和共存するというハッピーエンドです。

★ 子供には分かり難いメッセージ

絵がかわいい上、画面がとてもきれいなので、子供にぴったりです。しかし出される政治的なメッセージは子供には分からないでしょう。地球人は攻撃的な存在として悪役、脚の無いお玉じゃくしを空中に浮かせたようなテラ星人が善人となっています。地球人が善玉で、邪悪な宇宙人が攻めて来る SF を見慣れた人が多いので、この設定はユニークと言えるかも知れません。

出て来る地球人は全員軍人で、ブライアン・コックスが声をやっている邪悪な将軍に皆盲目的に従っています。ジェームズが疑問を持ったのはマーラに救われたから。ジェームズと弟が選択を迫られたのはジェームズがマーラに救われたから。直接の接触が無ければコックピットに座ったまま爆撃のボタンを押しているだけで、自分が破壊しているのが家族を持つマーラの人生だとは気づかなかったでしょう。

すでに星3つを破壊し、地球もだめにしてしまったのが地球人という設定も子供には分かり難いでしょう。4つ目として狙われたのがテラ星。そして最後の決着は平和を愛するテラ星の一部分を囲って、その中の大気を地球に適応させてそこに住まわせてもらう地球人です。

実は現在の世界の情景であり、決着の部分は一定のグループの人たちの希望的観測なのですが、現実の世界がこのアニメ通りに決着するかは分かりません。声優として参加している人たちにはかなり有名な人が並んでいます。この人たちが政治的な方向に賛同して仕事を引き受けたのか、単にスケジュールが合ったので参加したのかは不明。

オリンピックが始まるまでは世界をこういう風に解釈することができたかも知れませんが、8の並ぶ日が過ぎたとたん世界はまた大きく舵を切った様子。これがどの方向を向いているのか、どういう結果を生むのかは私には予想もつきません。子供にこれを理解しろというのはちょっと求め過ぎかと思います。

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