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エネミーオブUSA /
Echelon Conspiracy /
Подарок /
Die Echelon-Verschwörung /
The Conspiracy

Greg Marcks

2009 USA 105 Min. 劇映画

出演者

Shane West
(Max Peterson - コンピューター技術者)

Edward Burns
(John Reed - カジノの警備責任者)

Ving Rhames
(Dave Grant - FBI エージェント、リードの元同僚)

Yuriy Kutsenko
(ロシアの将軍)

Sergey Gubanov
(Yuri Malanin - 白タクの運転手)

Martin Sheen
(Raymond Burke - NSAの高官)

Tamara Feldman (Kamila)

Jonathan Pryce
(カジノのオーナー)

見た時期:2009年10月

★ 忙しいレームズ

偶然ですが、The Tournament に出たヴィング・レームズが連続して出演しています。先に Echelon Conspiracy に出て、直後に The Tournament に出ています。彼は今年恐ろしい数の作品に出ており、その数13本。来年もスケジュールがぎっしりで、既に5本は決まっています。出演の内容がカメオなのかは分かりませんが、Echelon Conspiracy は準主演、The Tournamentは主演です。

監督は 11:14 で1度ファンタに出ています。Echelon Conspiracy は3作目です。11:14 は若くして2つ目オスカーを取ったヒラリー・スウォンクがちょうど2つの受賞作品の間の2003年に出演していますが、他はほとんど無名の俳優です。大掛かりなスタントや特殊撮影も無く、ストーリーとユーモアで勝負しています。

Echelon Conspiracy では有名俳優を数人連れて来ており、アクション、カースタント、海外ロケなどもありますが、規模はB級でお粗末です。恐らくはローバジェットだったのでしょう。

ストーリーも呆れるほど単純にしてあって、プロットはスイス・チーズ状態(穴だらけ)。それなりに名の知れた有名人を動員してあるにも関わらず俳優が演技を競っているわけではなくお粗末です。

なので、取り上げなくてもいいようなものですが、なぜそういう作品にこれほどの俳優が出演しているのかを考えると、監督がこの作品を使って何かを伝えたかったのかという方向に話が動いて行きます。

★ レームスに注目したことは無かった

ドイツにはパルプ・フィクションのファンが多く、夏に野外の映画館で上映されたこともあるのですが(野外映画館は一般の公開と関係が無いので、主催者が独自に作品を選びます。となると人に好かれそうで、客足がのびそうな作品を選ぶことが多いです)、私自身はそれほど執着していません。なのでパルプ・フィクションで名を上げた俳優にも特に関心を持ったことがありませんでした。映画自体は良く覚えており、レームズの出番も知っています。

レームズを見てみると80年代中頃から映画、テレビに出始め、既に100本近い数出演しています。今年50歳です。芸能界に入ってから25年弱。

私が見た作品だろうと思われるのは以下の通り。私が見たのと同じ作品か確認ができないのですが、パトリシア・ハーストを扱った作品 Patty Hearst、続いて Dave、その次がパルプ・フィクションです。 パルプ・フィクションで一挙に全国区になり、その後は Kiss of DeathMission: ImpossibleStripteaseCon AirOut of SightBringing Out the DeadMission: Impossible IIFinal Fantasy: The Spirits WithinDark Blueドーン・オブ・ザ・デッドMission: Impossible IIIEchelon ConspiracyThe Tournament を見ました。お気づきかも知れませんが、彼を目当てに見たわけではありません。しかし見たらおもしろかったという作品にたまたま彼が出ていたという例は多々あります。

彼が出ているから善玉とか、彼が出ているから悪玉という風に役柄を決め付けられていません。それは俳優としては有利かも知れません。

★ 予想が少し外れた

レームズが出ていると悪人とは限らないのですが、他の3人については私はいくらか予想をしていました。見終わってみるとぴったりとは当たらなかったのですが、大外れとも言えませんでした。ついでにお知らせしますと、最後の最後を見逃さない方がいいです。

★ 雑なストーリー

筋はかなり簡略化されていますが、似ているのはイーグル・アイ。類似点が指摘されています。私は両方見ましたが、パクリとは考えていません。取り扱うテーマが似ていて、描写が違うと受け取っています。それほど似ているという印象ではありません。見る順番はイーグル・アイが先の方がいいかも知れません。

冒頭女性が携帯を片手に地下鉄の駅に現われ、携帯の表示を見ながらトンネルの中、線路を歩き始めます。携帯を見ながトンネルの壁に書いてある番号を確認しています。地下鉄が迫ってくるのをかろうじて避けた所に、反対車線の地下鉄がやって来て・・・。

その後の話はマックス・ピーターソンを中心に進みます。仕事でバンコックに来ていたコンピューター技師のピーターソンの所へ小包が届けられます。まだ発売になっていない最新型の携帯で、スイッチを入れるとメッセージが浮かびます。上から目線の指示ばかりなのですが、それがピーターソンに幸運をもたらします。飛行機の予約を変更したら、直後にその飛行機が墜落したというニュースに出くわします。「カジノに行け、これこれのスロット・マシーンを使え」と言われるのでその通りにすると儲かってしまいます。別な日、ブラック・ジャックをやると大勝ちしてしまいます。何度か大金を儲けたためカジノの警備員リードの目につき、追いかけられ、捕まってしまいます。

拷問されそうになった所で、別な男が現われ、助かりますが、それはFBIのグラント。今度は正式な尋問を受けます。ピーターソンがあまり情報を持っていないことは納得。しかしグラントが追っている事件に付き合わされます。グラントはNSAのバークと一緒に仕事中。最近相次いで不自然な死に方をした人物がいました。全員アメリカ人で、死の前、ピーターソンと同じ携帯にどこからか指令が入っていました。バークとグラントはその指令の出所を追っています。しかしこれまでの人物は死んでしまったため、今回ピーターソンを生け捕りにして、彼を先に進ませ、NSAとFBIはその後を追って行こうともくろみます。

カジノの警備主任はグラントの元同僚のリード。わけあって退職、現在はカジノの警備に当たっています。リードが働くカジノでピーターソンが大金をせしめたため、グラントとリードは再会。グラントは強引にリードを手伝わせます。リードの方はピーターソンがいかさまで大金をせしめたと考え追いかけていました。

とんでもない事件に巻き込まれてしまったピーターソンは嫌々手伝います。グラントとバークはピーターソンの影武者を立て、監視しながらその男にピーターソンと似た行動を取らせました。するとなぜか十字路で両方向が青信号になり、自分の側が青だと思って歩き始めた影武者は別な方向からも車が来たので、ぺしゃんこに潰されてしまいます。観客だけはその時信号が異常だったことを見せられます。誰かが交通関係のコンピューターを狂わせたに違いありません。

捜査官ではないノーテンキのピーターソンは途中で知り合った女性とデート。るんるん気分でいたのですが、女性はちょっと怪しいのです。出会ったきっかけからして怪しい。そして彼女のアパートはサイレンサーつきの銃を持った男や機関銃を持った男たちに襲われます。「こんなはずじゃなかった」とピーターソンが思っても事は重大。ただナンパしただけの女性だと思っていたら彼女は怪しげな顔の男たちと格闘までやるので呆気に取られてしまいます。その上負傷もしています。何じゃ、これは・・・。

ピーターソンよりは事情を知らされているのが観客。彼女は元からピーターソンをハニートラップにひっかけたのです。分からないのは誰のためにという点。それもここで明らかになります。所属が違ったり引退していても、彼らはアメリカ政府に関わっている人たち。

★ 悪党は何をやっていたか

話を進めるにあたって主演の3人は善玉、襲って来る奴らが悪玉という単純なルールを前提にします。アメリカが深く関わっている世界的な情報収集プロジェクトにエッシェロンというのがあります。プロジェクトなどと言うと良さそうに聞こえますが、一般の市民に取っては迷惑この上ない企画で、むしろ企み、陰謀と言った方がいいような内容です。なので映画も《エッシェロンの悪巧み》という名前になっています。この作品が作られたのが2009年なので私にはひどく古臭く見えます。かなり前から一般の報道ではこの名前を目にしていました。

世界中の携帯電話による通話、E-メイル、インターネットの内容をエッシェロンに集め、分析し、テロリストを探し出そうという試みです。各国の政界に反対者がいたようなのですが、結局は実行されてしまったようで、最近では通話やメイルは聞かれる、見られるのが常識とされています。どの国の言葉でも即座に翻訳されるとも言われています。おそらくは送金など銀行関係の動き、その他個人情報と呼ばれる情報も全て集めているのでしょう。日本で役所や学校、会社から名簿がどんどん盗まれているのもおそらくは最終的にこういう所に集まって来るのではないかと思います。

テロリスト対策という名目で強引に始めたプロジェクトでしたが、そのテロリストとされているグループが架空かもしれないという話も最近はおおっぴらに話されるようになって来ています。私はやはり一般の報道で最初にこのテロリストの名前が挙がった頃からガセネタではないかという指摘を見ていたので、この10年ほどの間に起きた事を横目で見ながら、「いったい何をやっているんだ」と思っていたのですが、いよいよ映画でもおおっぴらにこういうストーリーで撮影、公開できる時代に入ったのかと感心しているところです。

Echelon Conspiracy のストーリーは非常に単純化してあり、Echelon Conspiracy はシンボル的に作られたのだと思います。エッシェロンに深く関わっている人間の間でアップグレードが行われようとしていたのですが、アメリカ議会は採決で反対と決定。これに不満を持った人間が勝手にやってしまおうと陰謀を企んだという筋です。結局は陰謀は失敗し、最高責任者は退陣。非常に軽量級に作られているので、周辺の事情を知らずに見ると安っぽいB級作品という印象を残します。私もレームズ、バーンズ、シーンなどという名前が並ばなかったら、見逃したかも知れません。

ちょっと前にご紹介したセルラーも作品はかなりお手軽な話になっていたのですが、オスカー女優が主演。変だなと思ったら、実話を元にしていて、付録に重い話のセミ・ドキュメンタリーがついていました。どうもマジな話を安っぽいB級にして有名俳優を出演させてさらりと公開するというやり方があるようですね。

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